東京二十三区国平定戦記~中野区国~

幸田跳丸

第1話 物語の前に

 東京国は二十三の区国を中心国家とし二十六の市国を地方国家、十四町村が付属して栄えて日本が王政化し数百年。各地で戦争の狼煙が上がる戦国の世で圧倒的な科学力と軍事力を有し、関東圏筆頭の大国として近隣諸国に睨みを利かせてきた。



 正式名を東京大連合国。前述した通り幾つもある区国や市国が群れて出来ただけの、かつて東京都と呼ばれた小国群は、それぞれの思想文化を併合した集合国でしかない。



 表面的に言えば連合国としての団結を見せるがその実情は、区国と市国でまず不仲であり、八王子市国やあきるの市国が神奈川国や山梨国へと離反するなんて噂も耳にするくらいに団結は綻んでいる。区国間でもその領地を簒奪、もしくは属国に仕立て上げようと水面下では謀略を働らかせ合う日々。



 此処は東京二十三区国に名を連ねる中野区国。二十三区国内であれば十四番目に広い領土を持つが、技術力生産量はもちろん軍事力も平均的な小国にすぎない。しかし低所得者を初め誰でも住みやすく、国として機能する以前の平和な時代ではサブカルな文化が育った地として、それは今でも受け継ぎ育んだお陰も在り財源はそれなりに潤沢と言える。



 貨物輸送中央線中野駅から早稲田通りを東中野領との中間に位置する城と呼ばれる赤煉瓦で組み上げた住居で中野区国王は日々政務を取り仕切っている。



 私は宮廷作家として中野区国王の一生を時代錯誤な紙媒体に小説として後世へと残す仕事を任されています。



 私のことを話すより我が王について述べるべきですが、まずは書き手としての私について少しだけ触れたいと思います。



 私はミナモト・カヤと申します。元は渋谷区国王の下で宮廷作家を努めておりましたが、彼は自分を美化させた物語を私達、宮廷作家に強要し、真実をねじ曲げたあらぬ事を書かせる日々。偽りの記録に嫌気が指して募る苛立ちと不満も爆発、いよいよ国外逃亡の末に辿り着いたのが身分も明かせぬ者も多く滞在する中野区国なのです。



 機会があれば私と中野区国王の出会いから雇用云々も書ければ良いと思っておりますが、まずは……、そう、私の中でもこれをどう書こうか悩むほどに壮絶で、自身の未熟な技量と毎日の情報量に四苦八苦しながらも、彼女の物語を皆様にお届けできればと思います。

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