第234話・欠けた司
「じゃ、じゃあ! テルちゃん?」
クー子はどのように呼べばいいのかと伺いを立てるように言う。
「うん! じゃあ、いろいろ見せてもらうね! クルムちゃん、お手手!」
天照大神は満足そうに頷くと、
「ん!」
「
命そのものを育てる原初の信仰対象の一つ、太陽。その光が命にもたらす恵みそのものが、
それは、恍惚とするほどに心地よい感覚だったのだ。
命とは、水と太陽の結晶である。水の
「ほぅ……」
「あ! 私の知らない道!」
神々の道は、まだ欠けていたのだ。その中でも、荒ぶる心にも寄り添って理解を続けたが故、
だが、
「ん?」
自分の中にそんな道があると、
存在は全て、善く在ろうと産まれる。善のほぼ全てはその時の存在の総意によって決まる。揺るがないのは調和だけ。
だが、生きる上で善く在ろうとすることの困難に出会ったり、あるいは善性を否定されたりもする。その否定の言葉こそが“綺麗事”である。
神の仕事とは、その綺麗事をぬかす事に始まって、それを実現可能に落とし込んで教えるに終わる。この道こそが、神の仕事を象徴する道なのだ。ようやっと、それが見つかった。
綺麗事は、言うに安く、行うに難し。だからこそ、生命を超越した神々が行うのだ。
「クルム、あなたに司を任せることになると思う。大変なお仕事だけど、司の先達たちが支えるから気楽にね!」
司、それは神の仕事の中でも難しい仕事だ。
「ん!」
「私も、できるだけ助けるね! でもなぁ、追い抜かれちゃったなぁ……」
司の役割を持つと、正一位を超えた権威を持つ。もはや誰も
クー子はすっかり追い抜かれて、頼る側になる時はもう目前。子が自らを超える姿は、親にとって感慨深いもの。クー子は瞑目し、それを感じた。
「クー子……」
子としては、旅立ちだ。だが、
「うんうん! さすが、
それを見て
神々のお見合い婚は必ずうまくいく。うまくいかねば名が廃る。しかも今回は
「ん! 幸せ!」
「うぅ……」
赤面するクー子にはもう、外堀は残っていない。諦めるしかないのだ。
と言っても、神々が定めた婚姻である。将来的には今の羞恥など圧倒的に凌駕する幸福が待っているのだ。
「あはは……クルムちゃんたいへんだね」
無自覚なクー子の攻略をしなくてはならないのばかりは、
「ん……。でも、時間、いっぱい!」
だから、特段焦ることも頑張ることも必要ない
クー子ももう、婚姻の恩恵は受けている。だからこそ、羞恥などという取るに足らない感情に目を向けることができているのだ。
「皆様ー! ご飯でございます!
「テルちゃんです!」
ふんすと威張って、
言いながらも、
「わわわ!?
「クルムちゃんが結婚してるのに?」
そんな風に、みゃーこをからかいながら。
クー子の社にはよく、大輪の百合が咲くのである。しかも八重咲きであろう。
――――――
先日は体調不良のため更新をお休みしてしまいました。申し訳ございませんでした。
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