第232話・目覚めた道
「おはよ、クルム」
クー子はすっかり、
「ん! おはよ!」
背後からふと、太陽の光の気配。見えてもいない、熱も布団に遮られて、それでも感じた。日司は天道を歩む。太陽の子らすべてを見守る、大いなる母なる光の気配である。幼いからこそ、それは魂に直接熱を届かせるのである。
「お茶入れるね。日向ぼっこしてから、朝ごはん食べに行こう」
クー子の包容は解かれるが、欠片も
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
クー子と
感じるのだ。まるで風が精霊たちの歌を運ぶように。神の
「気持ちい……」
思わず、ため息の出るような感覚だった。
「よかった。でも、今日もしよ?」
毎朝やらなくては、ならないこの六年の習慣。最近では
「ん!」
やらねばならぬと、
「行くよ。
クー子の尾は無数に裂け、そして赤く染まる。それが幾重にも、
やらねば傷がまた浮かび上がってしまう。
だけど、それはどこにも見つからなかったのだ。無数に裂けた尾を撫でるのは、太陽のような暖かな神通力ばかり。
「あれ? ない……。踏破したってこと?」
だとしたらおかしい。
なのになぜか、それを感じる。
赤化した
解けるように、そして諦めてしまった物を呼び起こさせるように、クー子の中で少しづつ浄化され続けていた事変の残滓が消えたのだ。
「え!?」
クー子は驚いて、術を不安定にさせてしまう。
繭は解け、
「ん?」
それはまるで、天御中主が手助けしてくれた時のような。いや、それすらも超えて強力に。だというのに、
「クルム、帰ってちょっとゆっくりしたら、今度は
この存在を理解できるのは、きっとそれ以上の神だけであると思った。
「ん!」
クー子はほんの一抹の不安を感じていた。
だが、
本当に、まるでそのように操られていたと思うがごとく、ベストな婚姻のタイミングだったのである。
「クー子! ごはん!」
終わったのだと理解した
「そうだね。きっと、ちーちゃん作ってくれてるね!」
クー子は
襖を開けて部屋の外が見えたとき、そこに
「昨晩はお楽しみでしたね?」
開口一番、残念な
「ねえ! クルムの前で……ねえ!!」
クー子は焦りと照れが化学反応を起こし、変なリアクションを取ってしまう。
「お楽しみ……?」
「クー子様。なぜまだお教えしてないのです? 人の子なら、現代の子でも全てわかっている時期ですよ」
惟神の道では、性は生きる上で必要な知恵。だからこそ、聖書と言い換えられる古事記にすら、比喩的な性描写が記載されている。
「え……だって……。まだ、そういうの興味ない時期でしょ?」
三千歳ママの悪いところが出ていた。
「いいえ、人ならとっくに。神になったから、コントロールされているだけです」
だから、よくわかっているのだ。
「そうなの!?」
では、教えなくてはならない。そう思えばクー子の顔はまたまた真っ赤に染まるのだった。
「あまりボヤボヤなさると、かわいそうなので、私が一肌脱いでしまいますからね!」
日本には昔、筆おろしという文化が存在した。年上の世代の女性たちが、男性に初めての情事を経験させる文化である。
そもそも性を忌避したことがなかった地域での話である。性病もなければ、それは利益が勝るのだ。尋常な行為で興奮を覚えたのであれば、性癖が極端に歪むリスクを下げることが出来る。それは、その男性たちの同世代の女性にも都合がいい部分も多かったのである。
「だめ!」
クー子は反射的に強く否定し、そしてすぐに赤面した。
僅かに沈黙が流れ、やがてクー子は決意した。
「……近いうちにちゃんとする……」
消え入るような声でクー子は言ったのである。
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