第223話・神婚さん
現代世界で天皇陛下に一番似ているのはローマ法王である。だが、創作に目を向けると、ファンタジー世界の聖女にほど近いのだ。
毎日国民のために祈り、時折皇居や神社から出てきて、穏やかな笑顔で挨拶をして回る。相違点は国事行為と公務を求められることだろう。だが、権力自体はほとんど保持していない。天皇陛下とは、日本国の文化そのものである。
「こっちおいで!」
「いや、こっちこっち!」
そんな国家の象徴が、ここではあまり権威がない。なにせ、ここは古事記の世界がそのまま地続きなのである。要するに、文化の出発点だらけである。
「固くならなくていい。皆、気のいい方々だ」
「好きな食べ物とかってある?」
「陛下、神々はあなたを歓迎しております。お気持ちはお察しいたしますが、どうか力を抜いてください」
「
一国の象徴は涙を流した。そこは、皇室の魂が生まれた場所。彼らの皇室のいずれ帰るべき
懐かしく、そしてありがたいと思ってしまうのは仕方がない。魂が懐古しているのだ。
「おぉ!
結婚式場には当然、素戔嗚も居た。その破天荒な物言いは、多少なりとも緊張を吹き飛ばすことができる。
「スサ! いきなりずかずか言ったら、びっくりするでしょ!」
そんなところに当然、
「清々しい……スサ……
誰だって驚く、天皇でも驚く。
「ててて……おう!
だが、天皇のその驚きは次第に収まり。ふつふつと懐かしさが沸き上がってくる。
「あぁ……なんだか、お変わりないのだと、そんな気が致します」
肉体には一欠片すらも残っていない記憶が告げるのだ。こんなものであると。
それはどこか、和気あいあいとしていて、見ているだけで和むのだ。
「そりゃそうだよ! 今更変わるのって難しい! ほら、そんなことよりいっしょにご飯食べよ!
元々
いろいろなものを神のスケールに置き換えたようなものだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
宗教上の要人の反応は別れた。和風な神が多すぎて、憤りを感じる者も多いのだ。
単純に日本が住みやすいと思っている神が多いだけだ。特に蔑視したりだとか、そういうものではないが、今は
神は、神であるくせに、割と気ままな部分があるのだ。赤心といい、自らの心に正直に生きるのであるから、当然とも言えるだろう。
宗教の要人、そして神々。その間をかき分けて、クー子と
新郎新婦入場である。
そして、その奥には
「
そして、大国主は
それに合わせ、速玉の神族が大きく音を鳴らす。これを音切りといい、神道の最もお手軽なお祓いの儀式である。神社で手を叩くのが、これに該当するのだ。
「
さらに、婚姻を両人が受け入れる段階になると、言語すら神代のものになる。
これでいて、日本語なのだ。上代より遥か昔、縄文の言葉である。
「
「
それぞれが、それぞれの家族を受け入れる言葉。クー子は
それぞれの神族が一柱の女神から始まっているせいで、
大事なのは相手の家族を自分の家族として受け入れること。代表として父母の名を上げるだけだ。
「
本当はここに、伊邪那岐と伊邪那美の加護を得られるように言葉を続けるのだが、本人たちが自粛中である。
「
欲しいのはおしどり夫婦の例なのである。伊邪那岐も伊邪那美も元々は超おしどり夫婦だったのだ。喧嘩前に、大量に子供を儲けるほど。
要は、夫婦円満のために名を借りる感じである。
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