第222話・親善前式
陽も慣れたものである。“自分稲荷です”と言わんばかりの顔で、交流に歩き回っているのだ。
六年も神々と関わりづづけたのである。慣れようものだ。
「しかし、思いませんでしたよ! あのクー子さんとクルムが結婚するだなんて!」
「ですよね! 普通途中でいい人見つけてそっち行きますよね!」
話している相手は
「私も、うー君と結婚したけど?」
そんな話を聞いて、会話に割って入ってきたのは、親戚である
「待ってくださいよ! うー君?
「そうだよ! 私の旦那様!
そして、結婚の経緯も似ているのだ。
この、
「わーお、皇室のご先祖様……」
そりゃそうである。先祖の家系の結婚式だ。むしろ皇室が分家であり、
「懐かしいなぁ……本気で集めたんだけど間に合わなくて、膝から崩れ落ちましたもん!」
ヤマタノオロチを卒業して、その頃
そう、朱は古事記にMOB出演しているのだ。
「さすが、古事記世代! つか、今の陛下のお耳にも入れたいなぁ……」
陽はもう驚かない。すっかり慣れている。とはいえ、やっぱりどこか冷静になるとすごいとは思うのだ。なにせ、大化の改新から始まった平安時代。そのきっかけとなった古事記の登場人物達から話を聞けるのだ。これ以上役得を得られる大和民族はいないだろう。
そこには、日本の建国史そのものがある。古すぎて、“第一章諸説あり”とされていたものが、経験者の口から語られている。
「あ! それいいね! 今の陛下が来たらここに呼ぼう!」
「いや、恐れ多……くもないのか……」
陽は途中で気付いた。大和民族であるから、皇室には畏敬の念を感じる。だが、目の前にいるのはもっと畏敬すべき皇室の創設時代の神である。
「だって、私とうー君の子孫だもん!」
そりゃ気楽なはずである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
少し目を移すと、
「
とはいえ、クー子が正一位になる時は大いに泣いていたから
「いやぁ、案外名前が変わった程度で大して変わらないってわかったんでね!」
クー子はこの六年、ちょくちょく
「そっかそっか! いいなぁ……カヤちゃん全然来ないもんなぁ……」
誰も想像できまい、最高神がこうも愚痴っている姿は。
カヤちゃんとは、
「ごめんなさい……割と
当の本人は、その横に居る。流石に参加である。多忙な
多忙神族
「だよねー……。
「
それが、
「メグちゃんありがとう! でも、無理させちゃダメだからね!」
急かしたところですぐにできるようにはならない。それが神々の仕事だ。
「だよ? ゆっくりでいい……」
神前式というより、神式であるが……意味は変わらない。家と家の結びつきが重視されるのが、
「あ、それより
「アタシもそれがいいと思ってるんですよ!」
陽の没後をほぼ確定させた。あとは
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