八栄えの時代
第220話・神婚さん
それから、六年の歳月が経った。
神々の存在はなんとなくではあるが確実に日本人に浸透し始めた。
これが日本から始まった理由は、単純に、日本の神社に住み着いている神が多いからである。神社と寺、足すとコンビニより多いのだ。全国のコンビニより多い数の神々が一斉に、神であるとバレないように意識を緩めた。そりゃ、神がいると気づこうものである。
そこでである、神は日本版聖女である国家の象徴を
“あなたたちの祖先の一族が、新たに縁を結ぶのでいらっしゃい”と。そう、皇室と
六年の間に起こったことは当然、それだけではない。
「にーくん! にーくん!」
愛されすぎて忙しいのである。
「
性格が近代化改修された
「に、にーくんって……」
「
何も知らないのは、白無垢を着たクー子ばかり。そう、今回の婚礼は
「おおう……」
この
また、神の側として参加するのが
逆に
「掛けまくも畏き
天皇皇后両陛下はあくまで、日本の権威の頂点。人の世全ての上位互換的な
陽は緊張しながらも、皇室の祖である二人に呼びかけた。
「分かりました。では子孫のお迎えに参りましょう、ほら
「うん!」
「では、私はヴァチカンよりフランシスを呼んでくるとする!」
イエスも神の側から、宗教上の要人を
「私は……」
レリエルが言いかけたところで、
「クー子ちゃんのそばにね! 私が要人をお呼びするから!」
レリエルは会う頻度こそそんなに高くないものの、クー子にとって神階の垣根を越えた友人である。
「はい!」
よって、クー子の近くに居させるのがいいというのは、神々なら当然の判断だった。
式場は広いに決まっている。
そもそも神というのは、親族認定の幅が広い。それどころか神は全員が親族の関係である。だから、特に尊い神が結婚するとなると、存在する神が総出で参列するのだ。
クー子はそうなる神の中で最も数の多い存在。正一位である。
ただ、正一位はそうなる前に婚姻が済んでいるのがほとんどで、数が多いだけで実例は少ない。大昔以来である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「クー子……」
クー子は別室で控えていた。そこにレリエルがやってきたのである。
「ケッコンニナッチャッタ……ミサオマモッチャッタ……」
クー子はこうなることを予想していなかったのだ。途中で恋心が誰かに移り、その誰かと結婚するだろうと思っていたのだ。
なにせ、これまでの人生の半分ほどの時間を待たせたのだ。辛抱強く待つとは思わないではないか。
クー子にとっては1500年待つようなものだ。1500年は長い。
人生の半分だから長いというのもあるが、1500年だから長いという部分もある。クー子は神の持ち前の時間感覚で、1500年だからという部分を見落としたのだ。
「クー子!」
レリエルは少し大きな声を耳元で。そうして自分の存在を強制的に認識させた。
「ひゃい!」
クー子の肩が飛び跳ねる。
「クルムちゃんとの結婚、嫌?」
あまりに嫌がるなら強行はしないだろう。だが、嫌という感情はクー子本人の感情としてはほとんど存在しない気がレリエルにはしている。
「嫌じゃないよ! でも、ほら……コマだったし」
振り返って言う割には、恋心こそないもののクー子の顔には幸せの色が微かに浮かぶ。
それは
六年の間、反抗期のようなものはあった。それはただ、独り立ちの練習と、なぜかイライラする気持ちの相談。
どうあっても愛してくれるとわかっている相手だから、こんなぶつけ方が
「顔に嫌って書いてないよ!」
今はただ母性の延長。だが、無限に近い結婚生活がそれを変えることだろう。どうせ、
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