第206話・クー虐
夕飯後はクー子の放送。クー子にとっては、少し遅いこの時間がゴールデンタイムだ。VTuberのお客さんは意外にも学生が多かったりもする。勉強も夕飯も終わった頃に見ているのだ。とはいえ、そんな若年層が好きなゲーム実況や歌ってみたはクー子のチャンネルには無い。そのせいで視聴者年齢層が少し上がっている。
「こんこんにちはー! 稲荷さんちの、クー子です! 放送強化月間的な? お休みしちゃったから、バンバンやっていきますよ!」
永和
マジコイキツネスキー大佐:キタ――(゚∀゚)――!! あ、奥助先生の動画も見たよ! 授業参観気分で楽しかった!
そぉい!:授業も悪くないんだけど、二人がかわゆうて、ついそっちに目が行くんよなぁ……。うちの愛犬も人化の術覚えたりせんやろかw
コサック農家:せんやろなぁ……普通のワンコやもん!
チベ★スナ:しかしなぁ、復帰後みゃーこちゃんのケモ度が可変するようになったのはなんでだ?
オジロスナイパー:キツネスキーじゃなくてもわかるぜ。妖怪退治が修行になって、成長したんだ!
という憶測もできるが、事実は違う。妖怪退治より前からみゃーこは完全な人化習得していた。ただ、安定した理由はそれもあるのだ。
「という設定だから! 設定だから!」
視聴者たちも設定であると思っている。という設定という設定という設定と三回連続して、一周回って人間に戻ってきているのが真実であると。
クー子は安心したらつまらなくなる。だから誰もそれを教えてくれないのである。
気付かないのはポンコツ要素だ。
マジコイキツネスキー大佐:いやぁ……必死に言い張るの怪しいっすねぇ!
まっちゃんテンプリ:それ以上はやめましょう! 放送を聞けなくなって良いのですか!?
オジロスナイパー:息のかかった視聴者まで使うとは……。益々怪しい……
ヨハネ:いやあるいは真実ということも……
チベ★スナ:あるな!!!
イグセンプタス石井:本当にやめましょ?
なぜこんな環境が出来上がったのかは謎である。魔術師たちは完全に運営側認定だ。よってクー子の設定の維持管理に手を貸していると思われている。
こじれにこじれ切った環境がそこにはあった。
「ししょーちゃさぁん!」
もはや哀れになるほどに焦燥感たっぷりの表情でクー子は懇願した。
それはむしろいじめてくれ、その展開が美味しいと言っているようにも見えるのだ。
なにせ、解釈の不一致が起こらないのである。それは、視聴者たちが思い浮かべるクー子の設定が、クー子の事実の後に“……という設定でVTuberやってます”を付け加えただけのもの。実在のクー子にはどこにも、解釈不一致の要素がないのである。
マジコイキツネスキー大佐:虐めたくなるんだよなぁ……その表情……
オジロスナイパー:ヤバイ! このままじゃ視聴者の性癖がイカレちまう!
チベ★スナ:そいつら元々イカレてんだよぉ!!
クー子の放送はサディストの入口となっていた。本当に
だが、そもそも怯えさせたいとはクー子は思っていない。それは……少しは仕返しがしたいが、少しでいいのだ。実害がまだ出ていないから。
「ひどいよぉ! みんなしてそうやって私をイジるんだもん!」
ついにクー子は涙目に突入。だが、サディスト気味に育て上げられてしまった視聴者たちにその態度はまずいのである。
コサック農家:おい、これ以上はヤバイぞwww 神罰落ちてくるぞwww
まっちゃんテンプリ:いえ、本当にありえるんです……。クー子様は演じているだけのVTuber様だけど本当にありえるんです……
ヨハネ:神話的な設定を持っている相手に草を投げつける日本人のクソ度胸に草を禁じえない……
草が生える理由もいろいろ。楽しみ方もいろいろ。クー子とそのリアルの知人だけが焦っている放送環境である。
「次の放送では助っ人連れてくるもん!」
もうひとりでは手に負えなくなったクー子はにゃんコラボを心の中で企画するのであった。
相手は
猫だから家守神族になるというわけではない。その神の心の在り方が神族を決める。ならば、猫の稲荷もいるのである。今後ほかの種族から稲荷になることもあるだろう。少なくとも直近で、人間が稲荷に入る予定があるのだから。
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