空狐なクー子はリアルです

第190話・久しぶりの放送

 大社としてのクー子の社が完成し、宴もやり終えるとクー子は暇になってしまった。というのも、上位の神々が暇にしている部分があるのだ。クー子が放送をすること、それは神と人との接点である。やがてくる八栄やはえという神代。その衝撃を和らげるのに必要なのだ。


 とはいえ、そんなことをわかってクー子が放送してしまえばクー子の放送の面白さが消える。そうならないためにも、あたかも自発的に放送をしている気分にさせねばならないのだ。


 ヒヤヒヤ連鎖空間である。人間に過剰な神バレが起こらないかとヒヤヒヤするクー子。バレてもかなり大丈夫な状態にクー子が気づかないかヒヤヒヤしている天御中主あめのみなかぬし。クー子の放送を取り巻く環境は、究極めんどくさいことになっていた。


「こんこんにちはー! 久しぶりのクー子です! って……視聴者数!?」


 基本的にクー子の放送はいつもゲリラである。そして、クー子のネットリテラシーはガバガバだ。ツブヤイッターのトレンドなど、頻繁に確認したりはしないのだ。


ヨハネ:今ここに、再びの福音を!!!!

マジコイキツネスキー大佐:魔術師名乗る奴らに復活予告させたんだから、視聴者が帰ってくるのは当たり前!

まっちゃんテンプリ:予告しておきましたぞ! 稲野とうの市に新しく建設されている大社が完成して少し後にクー子様が復活なさることを!

オジロスナイパー:魔術師らしく予言じゃないんかい!

イグセンプタス石井:だから予言って言い張りましょうっていったじゃないですか……


 皆、クー子の復活をまずは迎えた。この日はクー子単独での放送である。今はまだ春休みの時期、陽が巫女としてとどまってくれている。しかも基本的に、幽世かくりよ側に。

 逆に、細石彦さざれひこは現し世の境内担当だ。あとは、天御中主あめのみなかぬしが幽世で渡芽わためと遊んでいる。


「そっかそっか! 魔術師さんたち、よくわかったね! 占術?」


 とりあえず、状況は混沌である。初手混沌で始まるのはクー子の常だ。

 今回に限って、魔術師たちは魔術的なことは一切していない。地蔵菩薩から、クー子の予定を聞いていて、ネットに強い魔術師がそれをツブヤイッターに流しただけだ。

 そして、一般ニキたちのそれに対する解釈はこうである。


マジコイキツネスキー大佐:クー子ちゃんは本当は神で、ここの魔術師は神のお抱え白魔術師。本当は、魔術なんて今回は使ってない。神々からクー子ちゃんの予定聞いてただけ!

コサック農家:なるほど! え? じゃあ、平安パフォーマーズは!?

ヨハネ:あれは平安パフォーマーではない! 神話パフォーマーだ! 間違えると地獄行きだぞ!

まっちゃんテンプリ:あ、地獄なのですが……神々以外は皆落ちるようです。ただ、苦しいところなどではないそうですよ。割と普通らしいです!

チベ★スナ:地獄に造詣ニキとか、この放送どうなってんだよwwww

そぉい!:じゃ、俺らその割と普通な地獄行き?

イグセンプタス石井:そういうことになります。ですが、正式には地獄ではなくて、根の国と申します。皆さんが想像される地獄は、その深いところだそうですよ。そこに行こうとすると、清々しいが口癖の神様に連れ戻されます。

マジコイキツネスキー大佐:え!? 素戔嗚尊すさのおのみこと!?

アデプタ松本:よくお分かりっすね!


 初手混沌、ずっと混沌。それがクー子のライブである。


「ひえええ!? バレてる!? やっぱりバレてる!?」


 神だということがすっかりバレてしまったのかと、クー子は慌てふためいた。


コサック農家:おい、設定って付けるの忘れてるぞ! 神だってバレたくない設定あるんだから!

マジコイキツネスキー大佐:あ、そうだそうだ! トイウセッテイデス!

まっちゃんテンプリ:棒読みはおやめなさい! クー子様が放送なされなくなったらどうするのです!?


 それぞれ違う立場からものを言っている。まっちゃんテンプリは神バレしても大丈夫な相手であり、神であると知っている。故に本当にバレたら、放送してくれなくなると思って居る。

 他二人は、あえてあやふやにすることで……。


「ねぇどっち!? どっちなの!? てか、私神じゃないからね! 神を名乗ってる、一般お狐VTuberだからね!」


 クー子がこの反応をするのを期待していた。それはもはや醍醐味なのだ。神バレを警戒して慌てるクー子。

 それを見た、視聴者は皆似たようなコメントをした。


マジコイキツネスキー大佐:あぁ、マジでクー子ちゃんおかえり! 引退しなくてよかった!


 彼が残したコメントにある二つの要素。どっちもを含んだものが多く、片方だけのコメントも流れていった。

 未だにあまり知られていない。クー子がそもそもVTuberではなくUtuberであること。

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