第165話・虚構の致命
無力感に苛まれ、そして劣等感に貫かれた。思惑通りだったのである。そのために、このシナリオは描かれた。
誰も目を向けない、この部屋の隅でそれは静かに立ったのだ。
困ったのだ。もう、すがるしかなかったのだ。比類なき力、
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触れば無事では済まないだろう。それは、
巨大で荒々しく、熱すら帯びている。
それでも、この瞬間だけ
「行くかね?」
その
ぬらりひょんは、
あるいは、聞かせていれば違ったかもしれない。だが、それは
なにせ、クー子の死を連想させるのだ。苦しみを、痛みすらも、想像させかねない。だから、わからなかった。わからないから、
「ん!」
何者にもなれないままの自分の方が怖かった。
そう、幼いと、心は逸るのだ。
「痛むぞ……」
ぬらりひょんは言う。今度はただ、苦々しい表情で。
悟られるわけには行かない。ほんの少し、ただ一回のその術のために残されたギリギリの神通力。そのために、ぬらりひょんは他のすべての術を諦めた。
「わかってる……」
「最後にもう一度。私を、
その痛みは、そしてこれから
「恨まない……」
ただ、その痛みに関しては、
ぬらりひょんは気づけば消えていた。
瞬間、激痛が走った。呪いに触れる半身がが焼かれ、赤黒くひび割れて泡立った。それはまるで、クー子の身に走る黒い
「うぐううううううう!」
痛みに声を抑えきれない。だがそれ以上に何かを感じた。
強い憎しみの中にひとしずく分の、悲しみと警告が込められている。それは、複雑な呪いだった。
誰も解いたことのない、創世の神の呪い。それに苛まれる痛みを、
ここで何かをしなくては自分は何者にもなれぬのだと言い聞かせた。
黒く焼け焦げた肌が、神通力の熱に沸騰する血が。それらが与える苦痛は、焼印などと比較にならない。だが、それでもその奥からはとてつもない力が
世界を作った力。物理法則、空間法則、神通力や妖力の法則、物質の存在すらも統べる力だった。
故に簡単である。成したいと願えばそれでいい。焼け尽きても構わないから、ただ思えばいい。
まずは飛べ。クー子のいる戦場へ。
そして見つければいい。彼女の敵を全て。
そして思い描けばいい。ただ、それらが地の底へと帰る姿を。それだけで、その矛は、それを叶えるだけの力が有る。
「今……行く……」
呪われていなければこうはならなかったのだ。圧倒的すぎる力を警戒し、誰かが常に見張っただろう。
アレイスターが、女神を呼び寄せなければこうはならなかっただろう。必ず、止められたはずだ。
その全ては、
ぬらりひょんはそれに逆らうわけには行かない。逆らってしまえば、その存在に気づかれるかもしれない。
ぬらりひょん存在中に、
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