第160話・シャーデンフロイデ
「無力は辛いか?」
その、ぬらりひょんが
「ん……」
頷く事のみが彼女に許されていた。心の底から、無限に力を渇望しているのだ。
「では、少しだけ話を聞いておくれ」
ぬらりひょんは承諾を待って……。
「ん」
それが得られたことで、話を始めた。
「なぜ、荒御魂は悪いと思う?」
それは、根本の話である。
「わからない……。でも、クー子、忙しい。辛そう……」
漠然とした、
「だが、その理由が有るやも知れぬな? 悪いと断ぜされるか?」
これは、問答であった。善悪、そして正誤を、ぬらりひょんは
「わからない……」
そう言われてしまえば、悪いとは思えなくなってしまったのである。
「
ぬらりひょんは言う。ただ、淡々と。
「違う……思いたい」
「あぁ、これは全く悪ではないのだ。ただ当たり前の、感情だ。そして、
全ての命は
「なぜ? 悪い?」
「良いか? 罪は遺伝しないのだ。如何に罪人の血を引こうと、その子はただ産み落とされただけ。子は親を選べない。それに、
それも鑑みて、
だが、そもそも伊邪那岐は約束を破った。伊邪那美が岩戸を出るまでまたなかったのだ。そして、あろう事か言ったのだ“化物”と。
我慢に我慢を重ねた結果、吹き出した怒りは大きなものとなってしまった。
「イサナキ……嫌い……」
聴けば聴くほど、嫌いになる。
「決してざまぁみろなどと思わぬように」
そう、前置きして、
このざまぁみろという快楽も、シャーデンフロイデと言う。これは誰でも起こりうることなのだ。直前に、否定的な反応を受けていると、この感情が目を覚ますのである。
「故にアレは今、もはや神と呼べる力は残っていない。クー子どころか、
「イサナキ……わかった。クー子……大丈夫?」
「本当に、良い子だ。大丈夫だ、クー子はこの
クー子が最も最悪のパフォーマンスでも、怪我をしない。そんな想定で相手を選ぶつもりである。現段階で、クー子の相手に選べない妖怪はまだ発生していない。
「安心……。組手……」
「私に残された力は逆算して、ギリギリなのだ。どうか許しておくれ。だが、
ぬらりひょんはそう言った。彼は、明確に想像を立てている。
ぬらりひょんの思惑通りなのは、
きっとそれは、
「残念……」
「なんと、物分りのいい……。もしも、これが終わって、私に我が儘を言うつもりがあれば、いくらでも聞こう。まぁ、本当の私は知らないだろうが、叶えてくれるだろう」
ぬらりひょんは無責任に言った。だが、自分のことだ。誰よりもその本質はわかっている。
結局神だ。子煩悩なのは当たり前である。
「ん!」
なぜ、こんなにも恨まれると思っているのか。何があるのか、
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