第158話・灯炎
クー子が
「クー子様! お急ぎください! クルムが!」
そして、第一声がそれだった。
「うん!」
クー子はすぐに
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ううぅ……」
と苦しげな声を上げながら。
「ごめんね、帰るの遅かったね……」
写真を撮っていたり、そういったことはほんの一瞬のこと。だが、その一瞬は、まだ少ししか生きていない
「クー子……」
帰ってきたのだと、無事なのだと。そう思うと、
まぶたを焼き、顔を爛れさせる、荒ぶる力の痛みだ。とても、子供が耐えられるようなものではない。
「どうしたの? 寂しかった? 思ったこと、全部聞かせてね」
「どうして……私……弱い?」
苦しくて、たまらなく張り裂けそうな痛みを
弱いから隣に並べない。ただ、待つしかできない。それが辛くてたまらなかった。
気づくと、その部屋には
「弱くていいんだよ。どんなクルムでも、私の大切なコマ。それでもね、クルムは誰よりも強くなる。焦らずに、ゆっくりとやっていこ?」
「ん! やる!」
と、ただ泣いて叫んだ。愛されているのだと、ここまで何度も何度も証明された。もう、疑いようのない事実だ。頑張ろうと殊更に想う必要もない。ありのまま、今の自分の普段の努力を認めてくれている。そんな気がしてならなかった。
「ねぇ
この時ばかりは、クー子も自分が神でなければ良かったと思った。ただ
「愛されてない……思った。疑うだけ……酷い……」
そう、
「そっかそっか……。大丈夫だよ。私は絶対帰ってくる。だから帰ってくるまで疑ってていいんだよ。怖くていいんだよ」
クー子は言った。ただ、優しくぬくもりに満ちた声で。
それでも、
「ねぇクルム、約束しよ。この事変が終わったら、そうだなぁ、いろんな所に行こう! 世界にはたくさん神が住んでるところがあって、私はそのどこにでも連れて行けるの! どうかな?」
きっと、このあとには大きな戦いがある。アレイスター・クロウリーも出てくるだろう。下手をすれば、他の
「ん……約束!」
それが嬉しくてたまらなかった。ただ約束をくれた。
クー子との約束は、
「本当は、中津国の神って普段暇なんだ! みゃーこや、ほたるんも誘おう! あ、法皇様にも会ってみる? 今代も相変わらず優しい人って聞いてるよ! それから……」
「クー子!」
息を吸って、覚悟を決めて訊ねる。
「顔、どうなってる?」
チクリとした小さな痛みで、傷ができた。今回の痛みはそれどころではない。きっと、ひどいことになっている。そんなことに、理解が追いついてしまったのだ。
「えっと……」
その時である。
クー子と
「クルム! 化粧と妖術! どちらがよろしいですか!?」
「ついでなので、油も用意いたしました。とぎ汁も温めましょう、ええそうしましょう」
「あたしがつくろってあげてもいいニャ!」
扉の向こうにはみゃーこ、蛍丸、クロの三人組だ。
みゃーこと蛍丸は、クロから話を聞いた。そして、どうせなら忘れてしまうくらいの娯楽をもってここに来たのだ。それは、美容。神でも人でも、美容というのは気分を上げる。少女ならなおさらだった。
「っ……」
すると、三人は近づいてきた。醜い顔になっているはず、そんなことを思っている
彼女らにも関係ない。美醜など、一つの要素でしかない。外見などには現れない、
「借りていきますね、クー子様」
蛍丸が
「それとも、いっしょに参ります?」
そして、みゃーこが左だった。
それぞれ手をとって、
「あ、出番ないじゃん!」
クロはがっくりとうなだれて後をついていった。
「
と、クー子もついていったのである。
その日のお風呂は、過去一番狭かった。だけど、それは
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