第153話・兆し
ぬらりひょんは、創世の神、天御中主の分身である。彼の助言は兆の果てに一つだけ外れる。
ただ、
「クー子、君の前に現れたのは、これから世界が戦乱の渦に包まれるからだ。この
ぬらりひょんは、その解決に当たって劇薬を仕込んだ。その劇薬を、彼は口にしない。ただ、鍵とだけクー子を指差して言った。
「それは一体……?」
クー子は息を飲んで訊く。
「
次にぬらりひょんは、
飄々とした、ぬらりひょんの面影はない。ただその声は静まり、クー子たちにのしかかった。
「家守ごときできることもないのでしょう。私は……」
その場にいる三柱は、ぬらりひょんという存在の特異性に気づいた。
外れない助言、断言される
だから、クロは逃げようとした。大きすぎる話に、小さな神の居場所はないと思ったのだ。
「待ちなさい。答え如何によっては、君の力は必要だ。クロ
ぬらりひょんは、またも断言した。
一度息を吐き、その瞳でその場に居る者をなだめた。そしてもう一度口を開く。
「あやかしは、この地に溢れるだろう。傲慢、恐れ、病、飢餓。荒御魂たちが従えたそれらが溢れるだろう。クー子、人を守るか?」
そうなるようにしたのだ。そうならねば、ぬらりひょんはただの無駄になった。
「守ります!」
クー子は断言する。どんなに恐ろしいとしても、それはまだ未熟だからだだと学んだ。そしてそれは、神ごときが啓蒙するに能わない。神もまた、未熟である。
「良い返事だ! ならばクロ
ぬらりひょんは、家守であるその存在に頭を下げたのである。
「もちろんでございます! ときに、貴方様は
この場の三柱の疑問を、代弁した。
「
と、ぬらりひょんは自嘲とともに、その正体を明かした。
そして最後に、ぬらりひょんは
「恨むなら、私を恨め。力及ばず、傲慢なこの神を」
その声は、今までに……
「助言?」
「そうだ。そうするといい。君の苦しみは、全て私の責任なのだ」
だが、それをよしとしなかった。必ず償おうと、心に決めていた。
「聞かない……」
「強いな、さすがは
微かに微笑んで、ぬらりひょんはそこで消えたのだ。
いつもぬらりくらりと、突然現れては消える。ぬらりひょんとは、そんな存在である。
消えたとき、ちょうどそこに蛍丸がやってきた。
「夕餉が……どうなさいました?」
並んで正座しているもので、蛍丸はびっくりしてしまった。
「あのね、ほたるん。今、ぬらりひょんがいたの……。それで、その正体が
天御中主、すべての始まりの和魂である。むしろ、和魂だの荒御魂だの、そんなものはない時代の神である。
「は、はぁ……」
興奮して言うクー子に、蛍丸は少し気圧された。
「クー子様、それよりも話さねばならぬことがあります!」
クロはしっかりものだ。否、クー子がポンコツであるだけなのかもしれない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お話はわかりました。もちろん、妖怪退治には微力を尽くさせていただきます」
食事の最中、クー子は蛍丸にぬらりひょんから聞いたことを話した。
「
聞く所によると、出てくるのは古い妖怪である。
現代に比べて、生物……特に人類が恐怖に塗れていた時代の妖怪。それは総じて、力が強い。
「あると思うよ! 昔の妖怪って言ってもピンキリだもん! その頃だって、みゃーこみたいに修業中の子はいっぱいいたもん!」
でなければ、神だって滅んでいる。だから、クー子は笑って答えた。
「私……も?」
「ごめんね、クルムはお留守番。あ! 私が退治に行く時、クロちゃんが来てくれない?」
そうでないと、
「賜りました! お気に入りと過ごす時間が増えました!」
「ん……」
だが、それでも
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