第146話・墓穴
昼食を終え、たくさん遊び、さらにその延長。放送が始まった。
そう、
「わんわーん! 今日は、わんこパラダイス! 珍しくテーマがある放送だよ! 本日のゲストはこの人、某国民的人気アニメから出てきた!? 巨大山わんこです!」
クー子の放送はいつも行き当たりばったり。いつだって始めてから考えていた。だけど、今日は違った。もっと、イヌ科文化を広めたいと言う
「わんわーん! 山わんこ……すなわち、ニホンオオカミ系のかすみんだ!」
彼女は、
「わんわーん! わたー!」
今日は三人。イヌ科文化初心者も放送のスパイスになるだろうと、
そんな、放送開始であるが、視聴者は大盛り上がりである。
マジコイキツネスキー大佐:なにこのわんこ! 女騎士風!
コサック農家:狼なのに、わんこ自称しちゃうの!?
ポリゴン:黙れ小僧! 我は、和魂なるぞ!
オジロスナイパー:ポリゴン氏わかってきたじゃんw
ヨハネ:天使様はそうそう怒らない!
まっちゃんテンプリ:日々の福音に感謝致します。
そぉい!:もう世界観カオスすぎて面白いわw
大口神族がわんこ呼ばわりされて怒るはずがない。
「なぜわんこと自称してはいけないのだ? 我も、わんわんと鳴けるぞ!」
イヌ科のほとんどが、わんと言う鳴き声を出せるのだ。
「私もー!」
そう、クー子を含める稲荷神族もだ。むしろ稲荷……狐は普段はわんわんと鳴く程である。
「わんわん!」
と、
だから、
「それじゃ、私も! わんっ!」
だが、それこそ今回の本題。イヌ科文化の普及に都合のいい姿だった。
マジコイキツネスキー大佐:貴重な貴重な狐姿じゃー!
オジロスナイパー:今日は狼もいいのか!
コサック農家:あぁ、いいぞ!
そぉい!:遠慮するなモフれ!
謎の連帯感を発揮する視聴者たち。これぞネットミーム汚染の恐ろしさだ。
それに対し、
「さて、これの意味が分かるか?」
と、勇ましく語る。だが、意味を理解しているイヌ科好きには、微笑ましくてたまらない光景となった。
マジコイキツネスキー大佐:ごめんね! これ、ネットで流行ってるんだよ!
オジロスナイパー:お前詳しいな! ここって犬語必修か!?
ポリゴン:うちにもわんこいるからわかるわ。意味が分かんなくてしょんぼりしてる時のやつ……。特にしっぽ
そう、
視聴者、キツネスキーとポリゴンは愛犬家だ。キツネスキーに関しては、狐好きがこらえきれず同じ科である犬が捨てられていたのを拾ってしまったのだ。
ポリゴンは、最初は観察対象として犬を家族に迎えた。これがどうも可愛らしく、最近はたまらないのである。暇を見つけては、公園にあそびにいくバ飼い主である。
「そこまで察しろと言っていない! 貴様ら! 絶対に笑っているだろ!」
さすがイヌ科、性格まで犬である。すぐしょんぼりするのだ。
「まぁ、イヌ科神族の尻尾は正直すぎるからね……」
クー子もそれは実感だいぶ昔に実感していた。だから、クー子はあまり感情を隠さない。
「しっぽ……立ってる……」
と、
イヌ科神族は、しっぽ以外が建前、そしてしっぽが本音なのだ。
「やめろ! 言うな!」
「これは、緊張とか不安とか……。今回は恥ずかしがってるって意味だね!」
「と、とはいえ。羞恥を抱く者は少ないのだぞ!」
恥ずかしい感情は、基本的にイヌ科にはあまりない。基本的には、緊張や不安が表されていることが多い。
ポリゴン:あ、それ獣医さんが言ってた! 恥ずかしそうで可愛いって思っても、ストレスの場合が多いから、気をつけてあげてねって……。
マジコイキツネスキー大佐:だから、うちの子がそういうしっぽになったら、めちゃクソ撫でくり回す!
コサック農家:教えていいん? クー子ちゃんのしっぽも解析するよ?
そぉい!:待て、冷静になれ! なんで感情と連動してるんだ!?
みっちー:RTSの体温機能に紐付けてるんじゃない?
視聴者みっちーのそれは、助け舟だった。一瞬狐バレを警戒して、クー子はヒヤリとしたのである。
「そうそう、体温機能と紐づけの手作り!」
あとは、いつもので完成だった。
「解析……される!」
だからといって、そこにまでは気が回っていなかった。
そう、波乱の幕開けである。
ポリゴン:なんでクー子ちゃんの尻尾は急に右に行ったのかな?
マジコイキツネスキー大佐:緊張→安心=上手くごまかせたぜ! かな? やっぱり本物!?
コサック農家:ここの解析班本物だな……しっぽが股下に回ったぞ!
そぉい!:お前らマジ冷静になれ! なんでしっぽが演技までかますんだよ!?
コサックとそぉいは、犬のしっぽによる感情表現が書かれたホームページを見ていた。それで理解してしまったのだ。
本物疑惑は、この日に一気に深まったのである……。
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