第132話・羽毛を持つ不死の龍

まっちゃんテンプリ:時に、太陽神は数多いらっしゃいます。そのうちのどなた様が、真なる太陽の支配者なのですか?


 魔術師たちは疑問に思った。黙っていたのは、放送の裏で議論をしていたからである。

 導き出された結論は、“訊ねれば良い”。そこに、太陽神そのものがいるのだから。


「どちらかというと、私たちは太陽にとって目印なんですよ。日照りが足りないところへと足を運び、それを目印に陽光が差し込む。私たち大孁おおひるめは、そんな神です。そして、その目印は今はめぐ様になっています。この役目を日司ひのつかさというんです!」


 太陽を動かしているのは邏玉比売めぐりたまひめである。だが、その実情がそうなのだ。太陽の側が協力的であるから、動かせているに過ぎない。

 ただ、大孁おおひるめ神族も心を持った存在である。差別的であったり、排他的であったり。すなわち、人が寄り付かないところはついつい行き忘れてしまうことが多い。


あけびちゃん……バレちゃうよ……」


 クー子の冷や汗は止まらない。本当に神なのだと今にバレるだろうと、危惧している。


「うーん。どゆこと?」


 はるは、正直あまり分かっていなかった。


「要するに、究極の晴れ女です!」


 大孁おおひるめ神族の頭上で雨が降るということはありえないのである。それどころか、彼女たちがいる場所は常に暖かい。こちらもまた、冬衣ふゆきぬ……パパ国主くにぬし泣かせな神族である。


まっちゃんテンプリ:なるほど、我らの家を温めているのはきっと、そんな貴方様方の在り方なのですね!

コサック農家:信心深っ!

マジコイキツネスキー大佐:でもぶっちゃけ、ガチなんじゃね? って思っちゃう件

ヨハネ:信じる者は救われる!

オジロスナイパー:駄目だこいつ。地味に狂信者だw


 ヨハネもヨハネで割とカオスな状況である。本来キリスト教徒であるはずが、信仰の対象が日本神話にまで及んでしまっていた。

 元々過激派ではなかったため、ほかの宗教を否定することはなかった。だが、クー子が語る日本神話の懐が深すぎたのだ。解釈ができてしまったのである。


「ふふっ、信じるだけじゃダメですよ! 例えば参拝! あれは神様に、目標を宣言するのが基本なんですよ! なんでもかんでもお願いされると、神々も辟易しちゃいます……」


 何でもかんでも願掛けされては、神も困るというもの。本来参拝の時にするべきは約束だ。それを守り、一貫性を貫く人間は好感が持てるのである。好感があると、神も気まぐれで助けてやろうという気になる。願いが叶うのは、そういった仕組みである。


「あの! あの!」


 クー子は本当に焦った。願をかけられる側として、朱が話してしまったから。


「あ、これは大丈夫! ネットとかに普通に転がってる情報だ!」


 と、はるは悪い顔でクー子に言った。


マジコイキツネスキー大佐:なんか、それ言われちゃうとバレるみたいな反応っすねぇ……?

コサック農家:やっぱ神なんすねぇ……

オジロスナイパー:あ、そういえばここでよく出てくる「掛けまくも畏き」って何?


 これも、少し詳しい人間ならわかるものである。


「あ、それは大祓詞おおはらえことばっていう祝詞のりとの冒頭。口にするのも恐れ多いのですが、どうかお聞き届けください……みたいな感じだ!」


 この知識から神バレはまずない。よってはるはしっかりと解説した。


「大和民族は、かしこまりすぎですけどね!」


 日本とは礼節と調和の国である。だからこそ、敬うべくはどこまでも敬う。だけど、絶対服従ではないのが面白いところだ。あけびは少なくともそう思っている。


「バレチャッタ……」


 神様であるとばれてしまった。そんな風に思ってるのは、クー子だけである。

 それを、面白がる神も当然いる。


ミカちゃん★:あんた、バレたらいけないってあれほど言っただろ!? あとで、折檻だ! 覚悟しな!


 そう、宇迦之御魂うかのみたまである。彼女は、こういうことをすることでクー子というキャラクターが輝くと思っているのだ。


「ひーん!」


 涙目のクー子。そこに救いの光は一筋もない。

 真横に、次の太陽神がいるにも関わらず。


マジコイキツネスキー大佐:今更なんだけどさ、ミカちゃんさ、コメントだとのじゃロリじゃないんだね?


 そして、状況はどんどんとカオスに。


ミカちゃん★:のじゃロリお狐さんじゃよー! かわいいかわいい人の子よ! 私を疑うなど、悲しいぞい!

オジロスナイパー:こいつ、キャラ作ってたぞ!

コサック農家:この放送はどんどん化けの皮が剥がれるな! とはいえ、作られたキャラだとしても、そんなのがいてもいいじゃない!

ヨハネ:天使様のなさること、全てが善なのです。キャラ作りも、例外ではございません!

そぉい!:もうだめだこいつ!

ポリゴン:キリストが多分泣いてるぞ……


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