第127話・春神
一方その頃、クー子は困っていた。理由は至極単純。
『
家守神族によるそんな通報が後をたたなくなっている。
大抵このような通報をしてくるのは大抵、わんこやにゃんこである。変わり種も実は多く、インコや九官鳥といった鳥類も居る。そう、全てのペット達は、愛されて育つと神に至る可能性を得るのだ。
「ごめんね! 今うちに
クー子は対応に追われていた。
『
それに家守神族たちも、彼女の名前を出すとすぐに納得してくれる。
なにせ現高天ヶ原の最高権威であるわけなのだ。それに、羽を伸ばせている
『
一人の家守に説明をしたと思ったら、次がクー子の元に来る。
「あ、もしかしてはーちゃん?」
ただ、次がこの一帯の家守の
彼女は珍しく非生物出身の家守神族である。
『そのあだ名……
彼女は
「あ、そっか!
といってもクー子はそのあだ名を聞いたがわ。あまり責めれられるべき立場ではないのである。
『
彼女も家守神族の中では特に古いほうだ。従って
「あ、そうそう私もだし、意外とみんなあだ名あるよ! 私はクー子! んで
クー子はいたって善意で話している。
『え!? 意外とみんなあるんですね! というか
クー子は今日、この説明をもう何度もしている。
だが一日くらいなら大丈夫なのだ。すぐに寒くなれば、桜が真冬に咲いてしまうこともないのである。
「そうそう、
だが、このはーちゃんにクー子が説明をするのは、合理的だ。
『なるほど、事情は理解したので、まとめ役としてみんなには話しておきますね!』
なにせ、はーちゃんは一帯のまとめ役。家守の連絡網の中心にいるのである。
彼女は南部曲り屋という文化財の柱の化身である。そして、
だから、彼女の
「よろしくねー!」
その後、クー子の元へ家守神族からの連絡はぱったりと途絶えた。
代わりに、人間が異常気象として気にして、クー子の社を訪れたのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
クー子の社は超マイナーである。人間たちにとっての知名度は無に等しい。それを知るうちのひとりは人類最強陰陽師、
彼女は鳥居の端をとおり、二礼二拍手一礼をしてクー子を参拝する。
「
それは流石に陰陽師。ガチ参拝であった。
ただ、その祝詞は長いのである。ここまでは前置きなのだ。最初にクー子を讃え、そしていつもご利益をありがとうとお礼を言っている段階。ここから、祈願の内容を述べつらう段階になる。
他人行儀すぎて聞いてて悲しくなるクー子は、
「もう!
なにせ、
「いや、だってクー子さんは神じゃん!」
とはいえ、陽のこれも仕方がない。前世は神職だったのだ。神社に参拝するときはこれが習慣として染み付いている。
なんだったら、禁止されなければ今も敬語だっただろう……。
「まぁ、そうなんだけどさ……。あ、そういえば正式な名前教えてなかったね……」
と、そこまで言ってクー子は口をつぐんでしまった。
「いや、教えてくれよ!」
しびれを切らした
「やだ!」
子供のように固辞するクー子。
「なんで!?」
これからもガチ参拝をしたい陽の望みと真っ向からぶつかった。
「だって、教えたらそっちしか呼んでくれなくなるかもだし……」
それは、あまりに他人行儀だ。だからこれからもクー子と呼んで欲しい。そんな風に思ったのである。
「これからも、クー子さんって呼ぶから! ほら、えべっさんのノリで……」
関西の人々は
「んーじゃあ……。
こうして、人類は初めてクー子の神としての正式名称を知ることになった。
「掛けまくも畏き……」
「やめて!」
クー子は、それを阻止したのである。チベットスナギツネのような顔で。
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