第126話・天御中主
その道中、
「そこにいらっしゃいますね……ぬらりひょん。いえ、
それは、
「見えていないというのに、なぜ分かるのだ? まぁ、私はただの分身体。かつて世界がつながっていた頃ほどに、君たちに恩恵を授けられない。だから、気軽に呼ぶといい……」
そう言いながら、ぬらりひょんは
彼が神々の前に姿を現さないのは、もうあまり力が残っていないからだった。
だから時折、本当に必要なときに現れては、解決に必要な言葉だけを残して消える。ただ、
「私を育てたのは半分はあなたです。お考えも、少しは察するに
だから、ぬらりひょんは
「懐かしい話だ……。して、知者である君に訪ねたい。どうだ? 予定通りか?」
ぬらりひょんは、まるで運命を操るかのようにところどころに情報を落としている。本体……
「はい、全て、
「ならば、尚更だ! 私の予定通りだ! イサナミよ、もうすぐだ……」
全てはぬらりひょんの掌の上で転がっている。少なくとも今のところは……。
「しかし、これより他に手段はなかったのですか? あなたなら見つけられたのでは?」
「無くはなかった。だが、その途中私は消えただろう。そうなれば、確実性がなくなる。嫌な役周りを申し付けてすまなかった。だから約束しよう。次が最後だ」
ぬらりひょんは気だるげに、そう言い切ったのである。
「朗報です。……本当に、朗報です」
口でそういう割に
「……すまない」
彼らは、悲劇の果てに希望を目指している。その希望を掴むためには、一度訪れる悲劇は決して避けられなかった。
「分かっておりますよ……。避けようと思えば、悲願は遠のく。ともすれば、つゆと消えるかもしれなかったのだと……」
秘される賢者、
「それと、もう一つ。
それは余りにも悲痛な面持ちだった。だが、言われた
「それでは子供扱いです! 私とてもう、45億4400万歳ですよ! たかが数万年親に会えなかったとて、寂しく思うほどでは……」
「そうなのか? 45億歳は子供だろう?」
高位の神は高位であればあるほど世間知らずというか、感覚がずれている。
「覚えてらっしゃらないのですか? 皆、立派に巣立ったではありませんか!」
「しかし……、イサナキはまだ思春期ではないか!?」
ぬらりひょんは言う。なんだかんだそう見えてしまうのだ。なんだかんだ子煩悩なのだ。
「え!? あぁ……確かに……。って、私は違いますからね!」
宇宙開闢級のおじいちゃんに対して放った言葉は、双方の常識の違いによって曲解された。
「乗り越えればすぐだ!
ぬらりひょんの言葉に、
「クー子は大丈夫ですか? 本当に帰ってこられるんですよね?」
ただ、それだけは何度も何度も繰り返し確認したくなることである。
「大丈夫だ。絶対に、大丈夫だ」
ぬらりひょんは強く言い放った。
「本当に心が痛いですよ。
「重ね重ね申し訳ない。嫌な役回りを頼む。
ぬらりひょんは言った、
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