第123話・威厳が滅んだ日
次の日、クー子が目を覚ますと縁側から暖かさを感じた。
冬である。稲野の中でも秘境に存在するクー子の社は、雪に閉ざされるのが常。だが、その朝は社の周りだけ雪が溶けていたのだ。
そんな縁側にクー子が急ぐと、
「おはよう、クー子ちゃん!
「伝えに来たの!」
と得意げに、
「おはようございます。それと、ありがとうございます……。でも、実は
クー子が答えた途端、
めぐり合わせがとことん悪い神である。
「えー!? 知ってたの!?
やはり、偉い神は威厳に親でも殺されているのだ。
あれほど神秘的に思えたにも関わらず。居るだけで、その場に春をもたらしてしまうにも関わらず。
「待ってください。クー子、今なんといいましたか!?」
何故かいつも神より耳ざといコマ。というより、神々がのんびりしすぎなのである。
「えっと……
それのことかと、クー子は首をかしげながら訊ねた。
「それは! 天照様はまだ和魂でらっしゃるのですか!?」
それは、
大孁は、叶うならば太陽を奉還したい。
それは万世一系を超えた万世一人であり、象徴としてずっとそこに在って欲しいと願わずにいられないものである。
「はい、間違いなくそうなのでしょうと……
クー子が答えた折、一気にそこに混沌が舞い降りた。
「クー子さん、説明変わりましょうか?」
いつの間にやら、
「ねぇ、忘れられてないかしら?」
と、
「朝ごはんのご用意を……しておきますので、どうぞごゆっくり」
起き出してきた蛍丸。この日は約束があった……一緒に料理をすると。
別になんということはない、日常の中の約束であり、特に意味のあるものではなかった。
「クー子さん、行かれては? こちらは、私が説明を買いましょう!」
と、
「じゃあ、お願いします!」
そう言って、クー子は台所へと向かった。
「私、
そんな愚痴をこぼす
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝食のができ、クー子のコマたちも身支度を終えて食卓に来る。
そして、
「おはようございます!」
「おはよ……」
コマ二人組はクー子に手を上げて挨拶をする。みゃーこが何故かケモ度高めだ。
「おはよう! みゃーこどうしたの? ちゃんと人化できてないよ?」
気になることはあっちにもこっちにも。クー子は忙しかった。
「おはようございます、お二人共! みゃーこ、はいどうぞ!」
そう言って、蛍丸は鏡を差し出した。
地味に……おしゃれにも目覚めつつあるのだ。だから、鏡を普段持っている。やはり、女の子なのである。ただし、鎌倉時代生まれの……。
「わわ!? お狐こんこん! 人になーれ!」
みゃーこは人化をかけ直した。今はむしろ直さなかったほうがよかったのではとクー子は思う。なにせ、顔が真っ赤なのがバレバレである。
「初めて見た……」
その
「それじゃあ、とりあえずみんなで食べましょう! いただきます!」
「「「いただきます」」」
クー子が号令をかけて、それに全員が続いた。
そして、クー子はようやく二つ目の疑問に取り掛かれる。
「
と、クー子が心配して尋ねると、
「クー子ちゃあああん!
と、大号泣なもので、クー子は
少しため息を吐いて、
「手紙に追記されていたのですよ。『めぐちゃん! 根の国には絶対に来ないでね!』と……。要するに死なないでということだと、私は思ってるんですけどね」
一瞬、
「天照さまああああああ!」
「威厳……滅びた……」
「
「ところで、
クー子は、このままでは話が進まないと思った。そこで、疑問をぶつけたのである。
「私は、クー子さんと一緒に
実際は使えないものがいくつかある。全て
「使えるんですか!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます