第113話・ジーゾ・クライスト
「ウゥ……ドゥ……ドゥラッハ……」
魔術師は実際に魔術で
「まずい! 速玉様! 神通力を……」
と、クー子はまるで弓の
「大丈夫ですよ!」
「遅い!」
自分が気を使ってもらったこともわからず、魔術師は尊大に言い放つ。
「あ、精神世界に一部引きずり込まれました」
と
「こりゃアレだね。アタシらは、本当に気を付けないと……」
「どんな術だ?」
ヤベー奴ばかり相手しすぎて、この術を全く使う機会のない
「精神世界で、力の比べ合いをする……みたいな術です!」
相手を負かせることができれば、魂そのものを破壊することができる術式である。つまり、即死系だ。
「大丈夫ですかこの人!?」
万が一、発動時に
細心の注意を払って、どうにかこうにか魂を砕かないようにしなければいけない。神々は、これを使われると大変である。
「葵たん、大丈夫!
花は自信満々にそう言い切った。
花自身ができることは、男命にもできる。
「ヒヤヒヤしたよ。でも、もう目が覚めるよ!」
引きずり込まれる精神の総量を制限して、ほぼ対等の戦いを精神世界で行っていた男命
「あああああぁぁぁぁ!? 貴方様は! 貴方様こそ! 貴方様こそ神秘!! 万物の極地!! サタン様!!」
目覚めた魔術師は、すぐに平伏し、そして言い放った。
精神世界だったから感じてしまったのだ。その洗練された力を。そしてその一端を感じ取れば、目覚めた時それは本当に指先程度の価値しかなかったのだと理解した。
「「「違う!!!」」」
神々は口を揃えて言った。
神秘なのは当然、なにせ神である。
「違うのですか!!?? なんと失礼な!!! 私は何たることを!!! 不躾ながら、伏してお頼みします! どうか、貴方様の名を!!」
などと、魔術師が言うから、神々は全員ジト目になってしまった。
「先程も申した通り、私は
魔術師とは、神秘が全てなのだ。神秘に跪き、信奉し、その一端でも借り受けられれば、それで人生の意味を見いだせる。そんな人種である。
それが、神秘の極地。主神に触れれば、こうもなる。
「なんと! いと尊き御名を、私は賜っていた!!! どうか、どうか、叶うなら、その神秘の一端を私にお授けください!! どんな代償でも、お支払い致します!」
魔術師は、命だって惜しくはなかった。魔術に一生を捧げるタイプの人間だったのだ。
「地蔵……」
「はい、私の領分ですね」
地蔵は、魔術師の肩に手を置いた。
「このお力、貴方様も!?」
神になった、元お坊さんである。そりゃ、魔術師にとっては神秘だろう。
「私は
地蔵は、数多の道では無い。だが、全部の道の入り方を知っている。
「そんな……」
地蔵は一瞬落ち込んだ。やっぱり、
「よろしいのですか!?」
だが、次の瞬間、その落ち込みは無残に砕かれた。
なにせ、魔術師は
「ええ、私でよろしければ
地蔵は温和な笑みで答える。
嬉しかったのだ。これで、根の国の深くに行ってしまう魂が減るのだと。根の国を空にするという使命につながるのだと。
「私は、あなたを崇めましょう! ジーゾ様!」
魔術師の発音は、どこかジーザスに近かったのである。
魔術師は勘違いしていたのだ。イエス・キリストのイエス。これを英語読みするとジーザスとなる。その正しい発音がジーゾなのだと解釈していた。
新興宗教のはじまりである。崇める対象は、地蔵菩薩。キリスト教的な雰囲気で、仏を崇めるというカオスの種だった。
「いえ、地蔵なのですが……。そんな西洋風におっしゃられても……」
ジト目な地蔵菩薩。アルカイックスマイルでは無い仏は、非常に珍しい。
「いいじゃねぇか! これでお前も、西洋名得たな!」
神々の真名以外は大概こうして決まっている。適当にそれっぽく解釈されたものを人間からもらうのだ。言っている
「神話ががががががが……」
陽の目の前では、本当に神話の一幕が起きていた。
カバラと仏教が融合したカオス宗教。神秘の紹介請負人、ジーゾを崇める宗教が発足した瞬間なのだ。
「ジーゾ様、ご案内します! 私、恥ずかしながらトップではございません。また、お手を煩わせることがあるかもしれませんが、神秘に逆らう者は如何様にでもしてください!」
その男はNO2であった。アデプタス・イグセンプタスと言い、人間を逸脱した魔術の達人として扱われる者である。
だが、この程度で逸脱したと言われてはたまらない。なにせ、もっと逸脱してる陽や神凪が一緒だ。
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