第108話・帰りは怖い……
学校の授業が終わったあと、その教室は死屍累々であった。
「ぐふ……あかん……ふふっ……もう笑われへん……」
と言いつつも、若干思い出し笑いが止まらない石売。
「
がっくりと、横たわるみゃーこ。
「拷問……ふふっ……」
「面白かったですわぁ……。流石、
成熟した、保護者側の神々はまだ余裕があった。
「お腹痛いですー!」
授業中、クー子も存分に笑った。
これが
時間あたりに伝えられる情報は少ない。だが、忘れることはこれで少ない。結局、効率が良いのである。
「せやろ! 授業参観は楽しいんやで!」
と、同じ神族、上位の神を、
「毎回来たいくらいですよ!」
でも全く鼻にかからない。なにせ、クー子だってさっきまで笑い転げていたのだ。
毎日これほどというわけではない。
「せやけど、よう見てみ! 皆、転げてまっしゃろ? せやから、帰りは怖いって言ってましてな!」
白木の言うとおりだった。今日はどんな楽しい話を聞けるのか、そんな期待に胸をふくらませて登校。だが、この状態では帰り道は大変である。
『くふ……。これはどうして、帰りましょうか……』
ちなみにであるが、蛍丸も大爆笑だったのだ。刀の形ではあったが、大爆笑していた。
「ところで
話し好きの
『クー子様! 今、私のことは伏せてください!』
と蛍丸は、必死にクー子に頼み込む。
『なんで?』
と念じて返すクー子に蛍丸は答えた。
『笑いすぎて足腰が立ちません……』
そんな状態だったのである。
蛍丸は神の観点でまだまだ幼い。だから、簡単に笑い転げてしまったのだ。
「ほほう? やっとですかい!?」
白木はいたずらごころから、百万回死んだ
「「『ふぶっ……!』」」
そのシーンが否応なく思い出されて笑ってしまう蛍丸から、また思念が漏れた。
「あーなるほどなぁ……。蛍丸はんもぎょうさん笑ったんやねぇ! 良かったわ! 付喪の方にもわらってもろて、蛭子も鼻高々やで!」
と、
「笑わないでいられる方がおかしいですよ!」
と、クー子。だが、そんな
「
「やめて……」
「勘弁を……!」
そう、授業を受けていた対象。幼い神々である。
「あぁ、悪いことしてもうた……。偉いすまへんな……」
と、
「でも、あの
当時の
だから、当時の
「クー子はん、お偉いさんやもんね? 君で呼ぶなんて、凄まじいわぁ……」
そのくらいになる神は、経済的にも精神的にも子やコマに不自由を感じさせないと言う基準である。いくつになっても安全に出産可能な神だから、気長に自分の成長を待ってから出産するのである。
「そんな、お恥ずかしい……」
と、クー子はこれを固辞したのであった。そもそも、普段からそう呼んでいるから。つまるところ、無意識である。
「せやけど、若いのにほんま立派や! 羨ましいわぁ! あやからせてな!」
従三位以上の神の嫉妬は、前向きである。蹴落とすなどということは考えず、あやかることを考える。
共栄と言う形で調和したいと考えるのだ。
「ところで、これ……どうやって帰るんですか?」
幼い神々はまだまだ足腰が立たない。時折、思い出し笑いして困っている。
「クー子はん、二人やから大変やね。あ、三人か! 担いで帰るしか、ありませんでっしゃろ?」
そういって、
「あーやっぱりそうですか……。本当に帰りは怖い学校です……」
と、クー子は苦笑いをしたのである。
でも、きっと次に行く時は喜び勇んで登校する。そんな学校に思えて仕方がない。
これこそ、行きはよいよい帰りは怖いの真相なのだ。
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