第106話・ヤハエ
面白そうということで、この日急遽コラボが決まった。コマ二人組に、蛍丸は道真が相手をしていてくれる。その点、とても安心ができた。
主神ではない高天ヶ原の神々は、主神よりかなり暇が多いのである。
「こんこんにちはー! 悠久の油揚げジャンキー、クー子です!」
なんだか、最近コラボという名目で、色々な神が出演しているなと思うクー子であった。
「声優志望の方や、歌舞伎役者さんなんかに、よくういろうを見せられる薬師でございます!」
薬師如来は手を合わせて挨拶をした。
デデデ:男の影は……って、仏は大丈夫だわ……
そぉい!:ういろう?
みっちー:あ、リン君がやってたよ! ういろう売りでしょ? っていうことは
そう、声を生業にする者の多くはういろう売りというものを練習する。その締めを飾るのがこんな文言である。“薬師如来もご照覧あれと、ホホ敬って、ういろうはいらっしゃりませぬか”である。そう、ういろうが関係ない人物にういろうをご照覧あれと度々言われる。そんな
「いやぁ、どうせならばういろうお持ちになれば良いのにと、私は度々思っております。喉に良いですし、香りがよく、舌がよく回るように感じますよ!」
実際、
「
クー子が訊ねると、
「ほとんど味がありません。お薬ですしね!」
名古屋ういろうは、その薬と共に出されたおもてなしの菓子である。そして小田原ういろうは、その薬本体である。当然、味を楽しみたいのであれば名古屋ういろうが良い。
マジコイキツネスキー大佐:マジモンの
チベ★スナ:流石仏、超温和!
コサック農家:男なのに許せるぞおい!
狐過激派気味の視聴者たちにも、
そもそも当然である。年の差がとてつもない。話が合う部分も多いが、合わない部分も多い。高天ヶ原では、年の差三千歳以内での結婚が良いと俗に言われている。
「はい、如来だなんだと言われていますが、しがないその
と言って、
観音に如来と、仏像のような柔らかい微笑みを浮かべることが多いのだ。アルカイックスマイルとも言う。
「あの……あの……」
クー子は焦った。本物の
ヨハネ:こんなに温和な方なのだ! 聖なる存在には違いない!
先に、
「はい、キリスト教の方におっしゃってもらうのであれば私は天使となりましょう。大和に伝わる神々もキリストの天使様方も、同じ八栄えにお仕えしているのです」
ポリゴン:YHVH出たぞ!
コサック農家:やたら日本語っぽい発音してない?
オジロスナイパー:そういえば都市伝説で、日本語とヘブライ語に共通点があるとかなんとか……
ヤハエというのは日本語の音だ。そして、頭文字のYHVHはヘブライ語のものだ。起源など主張するだけ無駄である。それに関しては、人ではなく神が起源なのだから。
「
クー子はもう、その日リアクション芸人だった。
だが、
億年単位生きている神だ、その英知は幼い神々の及ぶところではな。
「ふふふ、どこの言語かなどどうでも良いではないですか。天と地と地獄と、神も動物も、植物も。見えぬ生き物に加えて闇に潜む獣達。皆、共に栄えて参りましょう!」
面白そうと言ったのも、これを伝えたかったからである。仏にしては似つかわしくない言葉はこうして
ヨハネ:福音です! これは、間違いなく福音です! もしや、あなた様は、ガブリエル様!
キリスト教徒ならそうも思うだろう……。
やたら宗教的な話を帯びてしまった。普段のクー子の視聴者たちはすっかりなりを潜めている。
大和民族は何かを盲信することに向いていない。なにせ、信仰の相手が有史以前から
「あ、違います。しがない薬師でございます……」
ただ、本物の
こうして、クー子の放送はキリスト教的には、ガブリエル降臨説が強まった。
そして、
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