第103話・潜入捜査
「勉強……楽しみ……です! でも……、どんなところ……ですか?」
「そうですね……文字や算数、そうだ語学や歴史などもやりますよ! 先輩の
神にはたくさんの知識が必要だ。世界中の宗教と付き合っていかなくてはならない。なにせ、信仰の対象なのだから……。
「
注意しなくてはいけないのは、
「そうです! 百万回死んだ大国主様とか、キリスト教との遭遇とかやりますよ!」
それらは、神々の歴史の一幕。その話を面白おかしく脚色したものである。実際大国主は、おそらくまだ百万回は死んでいない。ただ、古事記にもあるように、死亡回数はダントツの一位である。
「定番でございますね!
と、みゃーこは笑った。
死んでも笑い話にできるのは
そして、危機的な状況を脱したあと、
「まぁ、勉強になるからいいか……」
となれば、クー子も納得するほかなかった。
「稲荷は……なんで行かない……ですか?」
渡芽は、一つ気になったことを道真に訊ねる。
「それはですね。稲荷の神々はほとんどが、元妖怪です。神になる頃には教養はお持ちなのですよ。大概はあとは道徳だけ。だからですね!」
稲荷に拾われる妖怪の多くがそうである。叩き上げ神族お稲荷さんなのだ。
道徳の大部分は、道先である神が教える。これが道説なのだ。だから、高天ヶ原の学校に通うことはない。
「私だけ……」
「クルム、学びは尊きことです! 我々元妖怪は、人間の学校話が大好きです! 神の学び舎となれば、その興味が尽きることはなく……。是非に! 潜入捜査を!」
説き伏せたのは、みゃーこだった。
目を
「行く……!」
そして相変わらず、身内には文法を用いずに話す
「乗り気のようで、嬉しく思いますよ!」
温和な笑みを浮かべる
クー子はひとつ気になった。
「クルム、どうして私たちには文法を使わないの?」
ただ純粋な疑問として、小首をかしげながら
「甘えてる……」
その返答は、余りにも可愛らしすぎたのである。
「クルムー!」
「いくらでも甘えて構いませんぞ!」
それは、クー子にもみゃーこにも大打撃だった。だから、思わず駆け寄って抱きしめた。
「ふふふ、こんなに仲の良い神と狛。珍しいほどかもしれませんね……」
高天ヶ原の地にモンスターペアレント問題は存在しない。神であるから、物事を冷静に考えて行動に移すからである。そして、温和に話し合い、ようやく怒るかどうかを決めるものである。
神同士であると、温和なうちに問題が解決することが常であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
やがて、クー子は蛍丸の方が気になった。だから、その場を
任された
「
二人は台所で、薬研でゴリゴリとやっていた。
「これは、クー子さん。今、二人で手分けして、薬草をすりつぶしていたところです。本日は和インドカレーにしようかと……」
インドのインドカレーと日本のインドカレーは別物だ。日本のものはまろやかさが特徴で、インドのものは際立つスパイスが特徴である。
「
と、蛍丸は興奮した様子でクー子に話した。
「薬師様だからね……! 薬のくせに美味しいなんて、よくあることだよ!」
狙った薬効、狙った味。それが
「こうも褒められると気分が良いものです」
と、
黙々とゴリゴリと……そんなのすぐに気まずくなって、雑談を始めるのである。
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