第99話・春待宴
宴もたけなわ、コマたちも眠りにつく頃の話である。
昔の祭りは夜通し行われた、ということもある。本当に暁まで起きていたのは、神々と
「
クー子は少し不安に思い、訊ねた。本当は忙しいはずの
「
「良かったです! じゃあ、思う存分食い倒れて行ってください!」
クー子がそう返した折である。
「あー! クー子! あんた、正二位! 今日から、またまた正二位!」
「えー!?」
クー子はもう少しゆっくり元に戻るものだと思っていた。
「人間と神との接点を上手く作った。これは如何様にも無視できない功績である。大事案の解決の糸口を作ったものとし、二階級の昇格を言い渡す。尚、近日における
「戻るの早すぎですね……」
と、クー子は苦笑いである。
「そりゃ、仕方ないさね! あんたは、誰から見ても有能バリバリ神だ! まぁ、アタシのコマだったんだから当然だがね!」
「ひええ!? 神の昇格に立ち会った!!」
と、膝の上で
「あんた、
こっそり、
「いや、本当にどうやったんだい!?
それは、
「繋げただけなんですけどね……。本当に能力がある巫女だったので、いろいろ神様の名前を出してみたんです。すると、恐れ多いと固辞するから、神との関わり方も間違えなそうだと思って。それで、花ちゃんに紹介したんです!」
そう、理由なく主神級の名前を出したわけではなかったのだ。利己的に考える人間であれば、我先にと主神と繋がりたがるはずである。身の程をわきまえ、固辞するところに、大和の神々に対する理解を見出した。
「おかしなものだね! 人嫌いのはずが、一番人と関わってる! そうか!? 嫌いの中に好きを見出そうとするから見つけるのかい!?」
なにせ、
「そうかもしれません……」
クー子はそう言って苦笑した。そして、ふと思った。
「そういえば、
いつぞや
神だって、嫌いな相手がいた。
だからこそ、クー子は人は怖くないのではないかとふと思った。
「クー子……寂しくなるよ、本当に。あと何年稲荷でいてくれるんだい?」
不意に、ほろりと
「どういうことですか!?」
正一位、主神というのはそうそう誕生しない。
「あんたはね。もうすぐなんだ……。あんたが一番道を早く進むんだ。そんな名前、付けるんじゃなかったよ。あんたは、まるで脱兎だ……」
主神にとって、神々の歩みはいつも早すぎる。
「あの……」
クー子は首をかしげるも、
「クーちゃん。
「はい、かぐや姫様……」
クー子が答えるも、
「
クー子は自分もそうなると言われているのである。それでも、クー子は胸に手を置いて、その胸を張って言った。
「如何な存在になっても、私は
そんなことをいうもので、当然
「クー子……あんたは、アタシの誇りだ! わかったよ、あんたが別の神族を起こそうとも、どうなろうともアタシたち稲荷の身内だ!」
そう言って、
「はい、是非ずっと身内で居させてください!」
いつまでも、いくつになれど、母神の、忘れ難しや、雪のたけなわ。と、クー子は後に詠って送るのであった。
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