外なる姿
第97話・黄金の大宴会
やがて、雪が降り始めた。
そんな、何もかもが眠ってしまいそうな寒さのある日に、クー子の社には精神的な春が訪れていたのである。
「第二回! 収益召喚の儀!!」
「甘酒をたっぷり作りましょうぞ! 祭りでございます!」
「甘酒!」
渡芽はすっかり甘酒が大好きであった。前回、
仕方がないのだ。なにせ、神が直接作ったのだ。美味は保証されている。ついでに霊験あらたかときて、非の打ち所がないのだ。
「んで、そのご相伴に与れる代わりに、油揚げの買い出しに行けと?」
ちゃっかり、
「ま、いいじゃないか! 平安以来だよ、神と並んでの神遊び!」
ついでに母である
「いや、光栄なんだよ。光栄なんだけど……、俺呼ばれすぎじゃね?」
陽にも当然、利益はあった。神が作った食事を食べるたびに、加護のようなものを得る気がする。それに、この前は、神器をもらった。セーラー服ではあるのだが、超強力だ。
「ごめんなさい、私たちまでご相伴に預かっちゃって……放送に協力したの最後だけなのに……」
「
と、
「たまちゃんには、レシピを提供してもらいます!」
なので
「油揚げって稲荷の方々にとって、一体なんなのですか?」
イマイチ乗り切れていないのが蛍丸。違う神族であるが故に、価値観が違うのだ。
「食べてみればわかるよ!」
と、ニヤケ顔のクー子。なにせ今日は
稲荷にとって、油揚げは別格。だが、
「それは、とても楽しみになってまいりました!」
クー子の言うことは多くの場合正しい。だから蛍丸はそれを信用したのである。
「せ、責任重大です……」
「あ、そうだ。謝らなきゃ……。
とはいえ、当時の
「改めて本当にすまなかった……」
「いえいえ! 気にしないでくださいよ! 私、嫌われて当然でしたし……」
「いや、それでも……すみませんでした」
と、
「それで
そのことがなければ、
「それなら、よ、良かったです……」
気圧されて後ずさる、
「たまちゃん様……冤罪だったのですか?」
「昔のことだよー! もう気にしてないし、おかげで
と、
それを見ていて、こらえきれなかったのが
「ぶふっ……」
と、吹き出す陽を
「気持ちはわかる……」
小さな声で耳打ちをしながら。
なにせ、従一位がそんなに親しまれて呼ばれているのである。流石に従一位ともなれば、と思っていたのに、神の気安さに驚いてしまったのだ。
「今ではみんな、たまちゃんだよね!」
と、クー子が言うと、
「誰のせいですか!? 誰の!!!」
そう、クー子のせいなのだ。クー子がたまちゃんを広げてしまったのだ。
「あ、そうだ。蛍丸と、
忘れていたとばかりに、手を叩く
「待って
と、冷や汗だらだらで訊ねる。
「どうせ、あんたもいずれ稲荷だ! 身内みたいなもんさ! アタシの子だしね!」
こうなった
「あだ名……嬉しく思います! どうぞ、お親しみ頂ける名を!」
蛍丸は乗り気である、むしろ待っていましたとばかりだ。
「あんたは決まってるんだ! ほたるん! これでどうだ!?」
それは蛍丸が思っているより、ずっと可愛らしいあだ名で、彼女は恐縮してしまった。
「おかしくありませんか? 私には、可愛らしすぎる気が……」
神に狛に人と、多種多様な存在たちが一斉に答える。
「「「お似合いだよ!」」」
と……。
可愛らしい彼女に、お似合いのあだ名だ。彼女が気に入れば、それでいいのである。
「なら、拝名仕ります」
蛍丸はそのあだ名を、無駄に謹んで承った。
この三人は、あだ名が似通ってしまった。なにせ、ほたるんにみのりん、それからはるるんである。
あだ名の命名が終わると、陽は油揚げの買い出しに向かう。
そのために持たされたのが、10万円近いお金で、
―――
本日は神仏紹介があったので、二話更新させていただくことができました!
ですが申し訳ございません、明日から一話更新です。待ち時間増えるかと存じますが、完結までお付き合いいただけると幸いでございます!
どうぞ、よろしくお願いします!
また現在、本作品クー子には外伝ができました。
クー子世界線のアダムとイブの物語です。クー子同様、神話の欲張りセットな世界観を維持しております。そこがお気に入りという方はぜひぜひご一読くださいませ!
アダム・トラベラー~楽園追放とか言われてるけど、本当は神々と食い倒れツアーしてただけだった件~
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