第91話・葵のひめ
たっぷりと
ただ、思考の摩擦が起きないのは、どちらかというと神の世界であるのだと。悪意というものを、最初から思考の外側に置いてしまえる和魂の世界。つまり、神と暮らしたほうがのびのびできそうなのである。
言うなれば、彼女は
そんな時である、
「あ、
それは、巫女としての仕事であり。そして、もし巫女がいない社であれば、それはコマの仕事だ。
「うーん、
ここまで話を聞いておいて、今更恐怖など
「会う!」
「どうせなので、一つ術でもお授けになっては?」
奇抜な術を多数編み出したクー子は、それなりの術師だ。特に、土壇場で術を組み上げながら戦えてしまうのはクー子のみ。それでも、既存の術全てを使うことができてしまう
「あ、それいいかも!
そんな思案は、もはや
「じゃあ、葵たん呼びますね!」
と……。
次の瞬間には、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あわ、あわわ! あの……花毘売様……。かのお方も、名のある神様でございましょうか!?」
神通力を開花させた神凪にはわかった。目の前にいるのは、別格の神であると。
「葵たん、この人がクー姉さまだよ! 私の先輩だよ!」
引きこもりは玉に
もはや、本当に憧れだ。
「直接会うのは初めてだよね! 私が、クー子。
クー子は人に対してだから、正式に名乗りを上げた。
クー子の名の音が“くうこ”になっているのには、宇迦之御魂の願いがこもっていた。“空狐に至るまで健やかでありますように”と、“野を駆ける兎のように自由であれ”である。脱兎の如く宇迦之御魂から逃げた、というのはついで。照れた
「ひええ!? こんな、高位の神様だったのですか!? 私は一体、なんてことを……」
と、
だが、同時にその力の波動は優しかった。そばにいるだけで、どこか心地よくなってしまうかのようであった。
「高位って、正三位だよ? 花ちゃんと一緒! あ、それと、この二人が私の狛狐!
クー子が言うと、二人はそれぞれ自己紹介をする。
「
「
「狛狐様ですか!? もしや、クー子様は
神凪はそうなのだと思った。神はたくさんの異名を持つことがあり、クー子が
「ごめんねぇ、それは私たちの主神様なの……。元々は、
もはやクー子は狛狐ではない。神社を任される立派な神である。
だが、神凪は少しホッとした。流石に
「いえいえ、そんな……。私にとっては、本当に心からありがたいことです。神々と、お会いできるなど、望外の幸福です!」
と、そこで、クー子は確認をとっているかが心配になった。
「あ、花ちゃん。
ハッとして、
「聞くの忘れてたよ、ごめんね! 葵たん、あなたこのままだと
神凪はこのままでは、
「そ、そんな!!?? 私が、神様に!? も、もちろん光栄でございます! これからも、
成れるという実感は沸かない。だけど、それは恐れ多くも光栄だと思った。要するに所属だ。尊敬する相手と同じ組織に属す権利を手に入れたのだ。そのスケールはさておいて……。
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