第89話・大孁
早晩、
その次の日のことであった、クー子の社は千客万来。毎日毎日、様々な神が訪れていた。
それは、ふとクー子がコマたちから一瞬離れた瞬間の来客だった。
その日の客は、少女を乗せた余りにも巨大な隼だった。隼は、クー子の前に降りると、すぐに人の姿へと変わる。
「こんにちは、初めて……よね?」
その人は、見目麗しい、陽光のような女性だったのだ。ただ……、長い前髪で左目を隠していることを除いて。
「えっと……はい……」
神であることは、一目瞭然。だが、クー子は気付かなかったのである。
「私は
目の前の女性の、膨大すぎる神通力に。
それは、あまりに優しく、暖かかったのだ。まるで、その場を春にしてしまうかのように。
「か、掛けまくも畏き……
それはもはや、自然の摂理を運営する神である。クー子の位を遥か超えた先の神、神の世のさらに超越した存在である。
「そんなにかしこまらないで欲しいわ……。仲良くしましょ! あ、それと、こっちは
コマと言われて、少し見てみれば、それでも神通力が主神級だった。
「朱です!
コマであって、その神通力。
「よ、よろしくお願いします!」
クー子は実感した。
因果応報は、道であり
「それでね、
それでも、どうしても欲しがるのは、朱の次の
大孁神族の主神は
「申し訳ございません、いくら
クー子の答えは、
「私からもお願いします。絶対に不自由は、させないと約束するから……」
「それでも、平に……」
クー子は地に手をついて、頼み込む。
「ごめんね、最後にもう一度だけ頼ませて。警告も兼ねて……」
「これは、善と悪、
彼女の左目には瞼すらなかったのだ。その周囲も焼けただれていたのだ。
内なるそれは、彼らを傷つける。
「
自然の全ては太陽に依存する。破壊も必要であり、再生も必要だ。だからこそ、恐ろしい悪の道が必要なのだ。
「関係ありません! あの子は私のコマなのです。どうして愛さずにいられましょうか?」
それは、母から子への愛と本質は変わらない。愛情に理由を求めない、無償の愛であった。
「うん、じゃあ任せることにする」
そして、呼びかけるように少し大きな声を出した。
「
バツの悪そうな顔をした
「クー子……」
そして、クー子の裾を掴んだ。
「絶対に誰にも渡さないから……」
クー子は
なにせ相手は、逆らえようはずもない、圧倒的な力を持った神である。それこそ、クー子から見れば全知全能に見えてしまうような……。
「脅してごめんね。最初からダメって思ってたの。でも、立場的には求めないといけないから……」
「
「さて、
死なずと思われた、
言葉を残して、二人の
あたりは、元の気温にすっかり戻った。もうすぐ、雪も降ろうかという寒さに……。
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