第87話・解釈摩擦
変わらぬ日常が流れていく。有事など、何処へやらだ……。
「クーちゃん……本当にアタシが出ていいのかい?」
前世のある陽はしっかりもので、クー子のコマ達もよくなついている。だから、
だが、稲荷神族が放送に露出することについては、わずかばかり不安が有る。
結局、善悪の最終的な判断は、
「今月は、多分うちだけじゃ消費しきれない油揚げが買えちゃうんですよ! 出演してくれれば、おすそわけの言い訳ができるんですけどねぇ……」
やけにニヤついたクー子。
「それを早く言えってのよ!!」
「くじゅ様もお好きですね……」
口元を押さえ、プププといやらしい笑みを浮かべるクー子。まるで仲のいい姉妹のように冗談をぶつけ合う。
「そりゃ、すきに決まってるってものさ! ところで、クー子。人のお金を人にしっかり返すんだね。関心だよ……」
クー子は貯金をすることで、ゆっくりと油揚げをを貯めることもできる。だが、クー子は神だ。人間とは別の通貨を使っている。だから、人間社会の血液であるお金は、あまりたくさん保有すべきではないのだ。
「当然です!」
と言って、威張ってみせるクー子。
「で、名前はどうするんだい?」
「タマちゃんは人間の間で有名ですが、くじゅ様は、案外そうでもないんですよね。ここで、神使
陰陽師として有名な
「大丈夫かい!? バレないのかい?」
「実はですね……
吹っ切れて名乗ってしまえば逆にバレない。
「なら、それでやってみるか!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「こんこんにちはー! 稲野在住、お狐系、神様系VTuber稲荷クー子です!」
クー子は、パーソナリティ全開で放送を開始した。
「はい、こんこんにちは! 安倍晴明のママこと
葛の葉もそれに続く。
だが、大誤算が発動する。
マジコイキツネスキー大佐:今度は正体を現すことで、逆にそういう設定って思わせようって狙いか!?
チベ★スナ:汚い、さすが狐妖怪汚い!
そぉい!:これまでさんざん誤魔化そうとしてたんだ、これだってごまかしの一環って分かるぞ!
ポリゴン:神妙にせよ!
みっちー:あはは……、視聴者さん訓練されすぎ……
そう、クー子の視聴者は、クー子をからかうのが大好きなのである。
からかうためなら、クー子のそれが真実であると扱うのは、至極当然だ。それが設定であることを口にするのは、野暮の極みと思っている。
「なんでぇ!!??」
クー子の作戦は見事粉砕された。
「あんた! 全然ダメじゃないか! バレバレだよバレバレ! どうすんのさ!?」
本当にバレてしまったのだと、
コサック農家:安倍晴明のママ……ロリ狐かよ!!?? くっそ羨ましい!
マジコイキツネスキー大佐:それな!
チベ★スナ:ロリ狐おかんもいいが、お姉ちゃん系ママのクー子ちゃんも捨てがたい……。
「こうなっちゃ仕方ない……
最悪、その手段が取れる。
奏上だが、
コサック農家:ひえ!?
そして、そこに
「う、
奇遇にも、Linneでの名前と一字一句同じ。なら、
「え、えと……えと……」
どう説明したものかと、焦りながらも考えるクー子。
「どどどどど、どうするんだい!?
焦りまくる
「セーマン、セーマン……」
困りすぎたクー子は、
「出来るわけないだろ!!?? なんとかしろ、このポンコツ!」
クー子が、普段ポンコツなのは、神として自立した稲荷の全てが知るところである。
そぉい!:あーこれこれ……。この、グダグダ感……。これのために生きてる……
みっちー:癒しだよねー
マジコイキツネスキー大佐:クー子ちゃんはこれなんですよ! ポンコツお姉ちゃんなのがたまらんのです!
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