第86話・母様
次の日のことである、クー子の
土曜日だったのだ。陽もその日は学校が休みなのであった。
「よ! クーちゃん! 陽が、うちの神社に来たよー!」
その時、クー子はコマ達の神楽の練習に付き合っていた。
「あ、
そう言って、立とうとするクー子を
「続けておくれよ、どうせだから見ようじゃないか! な、ハル!」
「あ、確かに! 見てみたい! 神の神楽!」
神楽といえば、やはり神である。発祥は、
「じゃあ、二人とも、見せてあげてくれる?」
大勢の前で踊ったことがある二人だが、それでも知人の前だと緊張するかもしれない。そう思ったから、クー子は問を投げたのである。
「ん!」
「無論です!」
だが、二人にとってはそんなことは無いようである。むしろそこには、自負があった。上手く踊れると言う自負が……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その舞を見た
「いや、すごいなおい!? で、歌は
「そりゃ似てるさ!
「似てるわけだ……。いや、しかしすごいな! 二人共、すごく練習したんじゃないか?」
舞自体が、素晴らしかったと、
「だね!
そう言って、
「頑張った!」
フンスと胸を張る
「この道二十年以上ですから!」
と、また年齢マウントを取りに行くみゃーこ。
「母様、そりゃないぜ! 今生じゃ、練習の機会がないんだよ!」
「どうせなんだ、両方舞える方がいいさ!」
できることなどというものは、多いほうがいい。
「うん、おいおい練習したいんだけど、場所がなぁ……」
それは、陽の苦悩だった。神楽舞はいろいろな意味を持ち、中には
ただし、神がその祭りを行えば、膨大な神通力で生贄を肩代わりできる。正一位総動員レベルの神通力が必要だが……。
「あ、うちでやる?」
クー子は、それで解決と手を叩いた。
「いいのか!?」
と、
「勿論!
クー子は、聞くまでもない確認をした。
「いいんだがね……。クーちゃんはいつになったら、あだ名で呼んでくれるんだい!?」
あまり、馴染みがないだけに忘れていたのである。だから、
「あ、ごめんなさい……くじゅさま……」
クー子は今一度、今度こそあだ名で呼ぶ癖をつけるのだと心に誓う。
「
ふと、
「あれ? 今って緊急時だよな?」
そう、例大祭が中断されるほどの大事の真っ最中である。
「うん、そうだね……」
クー子はよくわからないまま答えた。
「の割には平和すぎね?」
それが、
「できることがないのに、慌てふためいてどうするのさ? もう、祓いの
神は寒暖差で風邪をひくほど、メリハリがはっきりしている。故に、緊急時でも、いざ動くとき以外はのんびりだ。
流石に、祭りで神が
「お、おう!」
と、引き気味に
「お茶が入りました」
人に戻れるようになった蛍丸は、とくに味覚に夢中なのだ。
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