第85話・追っかけ
「
通話終了後、クー子は件の
彼女は……。
『く、クー姉さま!!??』
クー子の追っかけ的な側面を持つ……。
同世代の神の中で、頭一つ飛び抜けて強いクー子。すぐ下の世代の神からしたら、憧れもいいところだ。特にクー子は、人間が関わっていなければ、中津国最強。この、
「やっほー!」
気の抜けた声で挨拶するクー子。今は、同じ正三位、だが本質にはかなりの差がある。
『ご連絡、ありがとうございます! じじじ、実は、こっちから連絡したくて! その……、あの……』
こちらもこちらで、大層な恐縮ぶりである。追いつけないような相手から、レスポンスをもらったのだ。当然である。
「はいはい……落ち着いてねー! 深呼吸してから、ゆっくり喋って!」
クー子は、花に関しては慣れているのだ。
『はい、落ち着きました! それで……、降格の話を聞いたのですが……。クー姉さまは大丈夫ですか?』
中には居るのだ、よく知らないながらも追っかけている神が……。
「あ、うん。まったくもって大丈……」
そこまで言うと、興奮した
『本当に良かったです! でも、お揃いですね!』
花にとっては、それが不謹慎ながら嬉しかった。
「あ、それで本だ……」
終わったと思ってクー子が話すと、花の話しはまだ途中であった。
『ずっと連絡したくで、でも恐れ多く……。ごめんなさい、聞きます!』
正三位に落ちてしまったから心配で、それでも通話をこちらからするというのはためらわれた。憧れの相手だったのである。
花は正座した。伝わりもしないのに、姿勢まで含めて全力で聞く姿勢を整える。
「あ、うん、ありがとう。あのね、そこの神社に巫女さんいるでしょ?
若干気まずくもあったが、クー子はそれを押し殺して話を進める。
『はい! 主神様に善く仕えてくれています!』
となれば、間違いなく善に属する道なのだろう。だから、クー子は安心した。
「その子を、一回
花の動きは早かった。クー子の言葉に一も二もなく従った。
『はい、招きました!』
巫女であることが災いしたのである。いつも境内にいるだけに、神がその気になればいつでも
『あ!? え!?』
当然、
その消える瞬間を見てしまった人間はというと、それを忘れてしまう。これは、略式の神隠しである。
「合図とかしてあげてよ! いきなり過ぎて、
クー子は花を少し叱った。おそらく、
『ごめんなさい……』
花は少し冷静になって、流石に
「謝る相手が違うよ!」
クー子はさらに叱る。
『あ……』
それから、花は改めて
『
『いえいえいえいえいえ!!! そそそそそ、そんな、めめめめ、滅相もございませんん!!! 常日頃から、
キャパシティオーバー、再来である。言葉すらまともに紡ぐことができなかった。
『あ、それ私!』
そう、花である。
『そそそそ、そうだったのですか!!?? も、申し訳ありません!! 私としたことが……。掛けまくも畏き……』
途中で、相手が神だから、祝詞構文を用いないといけないと思った
『あ、普通でいいよ! 大和民族と、神々の仲じゃん!』
これは、神の常套句である。最も利用頻度が高かったのは、平安時代だ。
『そ、そうなのですか!? 大和民族と、神様方は仲がいいのですか!?』
実際に、最も長く神族の王朝を維持したのが大和民族であり、日本だ。
その文明の最初の王は、どこも皆等しく神族である。メソポタミアのギルガメッシュ然り、ユダヤのダビデ然りだ。
『うん! 天皇様達いるじゃん? あれ、元々は神族。ただちょっと、今は黄泉に魂が落ちちゃうようになってるけどね……』
それを、引き戻したいのが神族である。
中でも、
『本当に、我々の陛下が
神道に携わるほど、熱心な大和民族である。ならば、天皇が神であったとお墨付きをもらって、嬉しくないわけがないのだ。
「ねぇ、花ちゃん。あとは、お任せしていいのかな?」
クー子は訊ねる。どうやら後は、二人で話せばいい、そんな風に思えたのだ。
『クー姉さま! また、ご連絡しても?』
花は通話終了が少し残念である。だから、次の約束が欲しかった。
「暇なときなら、いいよ! もし何かあったら、
『はい!』
その通信の終わり際、
『お口利き、ありがとうございました!』
クー子の声は、
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