第84話・ゴットスケール
少しして、
『
かかってくるまでにほとんど時間がかからなかった。だから、この時点で
声は、女性だったのである。
「ご連絡ありがとうございます。改めまして、正三位、稲荷駆兎狐です」
クー子に偉ぶるつもりはなかった。だが、礼儀として、身分や名前は明かさなくてはならなかった。
『掛けまくも畏き、
今や、官位が残るのは、神々の間だけ。術式、正三位と名乗ったこと、それらは
「祝詞構文使わなくてもいいよ! 稲荷と大和民族の仲じゃない!? でも、正三位って言われて、パッと気付くんだ?」
いじめられて、
『はっ、はい、これでも巫女の家系ですから……』
そう言われて、神だと察せるのは、神職のみである。女性の神職といえば、基本的には巫女である。宮司も居るにはいるが、少数派だ。
「あ、巫女さんなんだ!? どこの神社?」
神社には主祭神と、
『熊山神社です!』
しかしとて、
神職に対して、神であることを証拠と共に開示する。これほど相手を緊張させられることはないのである。
「あー東京かぁ……。私、岩手だからずっと居て教えたりできないけど、
勿論、直接声をかけられるわけではない。
『ひえ!?』
「あれ?
そういう問題ではない。どちらにしろ、祀っている神だ。
『あ、あの……恐れ多いと言いますか……』
むしろ、
「あ、じゃあ花ちゃんにしよっか! 私と同じ正三位だよ!」
クー子は神、声をかけた時点で、どうあがいても神しか出てこないのである。
『そ、それならば……』
キャパシティを少しオーバーしたところで、なんとかである。神に声をかけてしまったのだと、
「ところでさ、なんで霊能連の総長やってるの?」
クー子は気になっていた。なにせそれは、名前からして胡散臭い。
『それは……私が、なまじ力を持ってしまったせいです。お祓いなどで、力を使っていたら、あれよあれよと……』
「あー、担ぎ上げられちゃったんだ?」
クー子は思った、人の世はいつだって苦労まみれであると。
『はい……』
神凪の声はすっかり意気消沈していた。
「あ、そうだ! Linne交換しようよ!」
直接会うのは怖い。だが、インターネットを通してなら、肉体的ないじめなどできない。だから、クー子は怖くないのである。
『Linneやってるんですか!?』
衝撃である。神がLinneをやっていると思う巫女など、いないだろう……。
「やってるよ!
クー子の言葉で
『
そりゃそうである、お稲荷さんの代名詞に日本三大妖怪だ。
「うん! あ、そうだ!
クー子は神凪を無自覚に追い詰めていく。
『それは、恐れ多すぎます!』
もはや致死量の畏れである。
「わかったー! じゃあ、とりあえず花ちゃんに話しておくね! 後で、LinneIDも送るよ!」
自分の身分を低く見積もるのは、不利である。何でもかんでも、断ることができなくなってしまう。クー子相手なら、断ってしまえばいいのである。和魂ではあるから、案外ちゃんと固辞させてくれるのだ。
『わ、分かりました……』
そんなことは露知らず、
「それじゃあねー!」
この、術の通話、切るのは簡単だ。思えば良いだけである。
『ありがとうございました……』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます