第68話・一級事変
「ま、そのままでいいか……。功労者っぽいしな!」
ただ、
その神の力が強ければ強いほど、それは証拠になる。道を進んでいる、つまり訳もなく荒ぶることはないという証拠だ。
「あっ、やっちゃった! 蛍丸ちゃん、戻って!」
蛍丸は、人の姿であっても刀である。能力は戦うための力に特化しており、抜き身の刃と変わらない。
「そのままで良い!! 功を成したなら、褒めてやらねばならぬではないか。刃の姿では、言葉を交わすこともできないであろう?」
だが、抜き身の刃が神を
だから、
「んで、なにか掴めたんだろ? 見せてくれるな?」
「そうでした! 石の中で、術式を再現することができました! この紙に封じてあります!」
そう言って、クー子は蛍丸と二柱で得た紙を
「大手柄だな!
「この功績を持って、
「あ、ありがたく存じます!」
クー子は焦った。神階大返しの始まりである。
「光栄にございます」
蛍丸は、冷静にそれを受け止めた。
大初位というのは、社への配属を願える一歩手前だ。蛍丸は、もうすぐ社を持つことが可能になってしまう。
だが、
「んで、クー子が見た感じ、何かわかるか?」
「おそらく、ルーンの一部……。ソウェイルが途切れたものだと思うんですが、それが書いてあるんだと思います。あ、それとやり方です。器物を起源とする殺生石の術式で、石に入って妖力を開放してください。かなりの量の妖力が必要になるので、ごめんなさい、二個目は無理です」
石を無理やり妖怪にするようなものだ。だから、クー子でもそう何度もできるものではなかった。
ソウェイルのルーンには、力や太陽の意味が有る。間違いなく、
「そりゃ……クー子以外がやるのはきついな……」
「クーちゃん。あたしや、たまちゃんは無理かい?」
余談……
「小さな石なら
葛の葉は妖力があまり強くない。もちろん、稲荷の基準でだ。
さらに言えば、
「んじゃ、一級全員に声をかける。貸すって感じになるが、稲荷を手伝ってくれると思うぜ」
だが、それでも
神々がどよめく。
「畏まりました。必ず明るみにしてみせましょう!」
「おう!」
こういったとき、
「此度は、一級事案とする!」
一級は、事案分類で最大だ。一級事変に発展する可能性を示唆するものである。
事変に至ると、数千万人という被害者を覚悟しなくてはならない。神だって、幾柱死ぬかわからないのである。
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