第63話・中座
「おかえり、クー子。ところでだ。昨日は飯食って寝ちまったから、あんまり家の中を見られなかったんじゃないかい? みゃーこ、クルム!」
「
みゃーこは訊ねた。それは、みたいに決まっている。自分が所属している神族の最大の聖地、そんなものはきちんと時間をとって回りたい。
仏教徒が寺院を訪れたがるように、キリスト教徒がエルサレムを訪れたがるように。
だけど、祭りとはいえ、神には仕事があるのではないかと思ったのである。
「あぁ、そりゃ一日目と最終日の話だね。それに加えて、最終日前日もクルムの仕事があるね」
本来は最初と最後。初日は、
「それならば! あ、クルムはどうですか? 見たいですか?」
「ん!」
みゃーこが訊ねると、
「待ってください、たまちゃんはどうするんです!?」
クー子は相変わらず、
「あの子が、二席で出店やってくれるから、あたしらが帰れるんじゃないか! それに、たまはいつでも家に来れる。なにせ、住んでるんだからね!」
「じゃあ、帰ります? 二人に楽しんでもらいたい用事しかないので、どれを優先しても大丈夫です!」
クー子は言った。妖怪退治用の
「そうだねぇ! 行こう!」
「無詠唱いいなぁ……わんっ!」
クー子は、声を出さないと狐になることはできない。
クー子の狐姿もそこまで負けているとは言い難い。一回り小さいほどで、二柱とも美しい毛並みだった。
「あんたら、あたしに乗りな! 普段はクー子の所に行ってやれないからね!」
「恐れ多いです……」
だが、みゃーこにとってそれは、主神にまたがる行為。易々とできることではない。
「仕方ないね……」
二人はそのまま、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
二人はそのまま、
たどり着くと、
「「これで十二時間ほどは、二人になれる!」」
稲荷神族は狐である。化かすことが本来得意なのだ。
クー子がこの系統の術をあまり得意としないのは理由があった。化かす場合、対象をつぶさに観察する必要がある。なんなら、服の下に隠れているものすらも。
だから、コミュ障のクー子は、観察対象を手に入れにくい。一番得意なはずの、この術系統を諦めているのである。
「「それと、その大太刀! あんた、
ポンと音がして、煙が上がり、
「申し訳ありません。寝ておりました……」
「「いいだろ?」」
分身含め、
「もちろん。
クー子の誘いに、
「そうですね……。魅力的なお誘いです!」
出した結論は、もう自分の在りたい姿で在ればいい。神通力を消費したときだけ刀に戻ればいい、だった。
神階を超越した神から、下級神の手に渡ったが、これはこれで悪くない気がした。なにせ、クー子の武器は自分だけなのである。
そして、
「じゃあ、みんな上がってきな!」
二回目だろうと何回目だろうと、外に家をもつ限りこれがないと入れない。
神の家の不便なところである。
「「「「はい!」」」」
この時から、二人に分裂した
それにより、二人の
「あんたはこっち!」
と、分身の方の
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