第60話・空の重罰
しばらくしてから、二人で納得してから、二人は離された。
クー子は今、五柱の神の前に立っている。
「クー子、本当にごめんなさい。神の抱える問題の、その根本にあなたを巻き込みました。あのお方はもはや、真名さえ忘れておられる。いつ、根に落ちるとも知らぬ、か弱き神に成り下がった」
全ては茶番だ。ただ、
ただ、
それは、自尊心である。これだけは古事記ですら、神の放った原文に近い。その時、
「オヤジに啖呵切るってのは、清々しいじゃねぇか! どうだ? お前の血で天孫降臨しねぇか? 相手は、この
「
自分に害を成した神が一切の罰を受けなれば、
それは、奇しくも、妖怪に取り憑かれ頃の渡芽に少し似ている。
「堕とすのも道……」
「あかんやろな……。そんなことになれば、多くの神が根に下る」
導いてくれると思っていた神が急に
「放免でいい……」
「
それすらも知っているから、知恵の神なのだ。
「とりあえずだ! クー子よぉ、とりあえずここだけは絶対譲りたくないっていうのはあるか?」
意外にも、最も荒ぶる
「えっと……。
一度育て始めた。だから、最後まで面倒をみたい。引き離されるのは、きっと辛いだろうから……。
クー子はそう思っていた。だから、それだけの安堵を求めた。
「よし、じゃあ従三位以下には落とさねぇ。それでいいな?」
「神階だけ、落とす……?」
「悪い人やでぇ、実質意味ないやん! クー子ちゃん、いまこうしている間にもえげつない功績稼ぎよってるっちゅうに。一年もあれば、正二位やん!」
神にとっての一年など、明日のような感覚だ。
クー子は、印税を大量にもらっているようなものである。
「しかし、良い案だね。従三位まで落とせば、厳しく罰したと思っていただけるかも!」
「そんなものでいいのでしょうか?」
クー子は戸惑う。普通に考えて、許されないことをしたのだ。
「いいだろ? 本当は罰与えたくないんだ! なんなら、俺は天孫降臨させてぇ!」
「義父上はこの際、無視しよっか。でも、俺はそれでいいと思う。正直、罰したくないから」
欲しかったのは、クー子を知らなければ超厳罰に思える、超軽微な罰である。そんなものを、底津はいとも容易く思いついてしまった。
「ごめんなさいクー子さん。一年だけ我慢してくださいね!」
「どうせ、とんでもないことをする……」
こうして、クー子の神階は従三位まで落とされた。法的に、コマを持てる最低限の神階である。
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