第59話・伊邪那岐
次の日のことである。クー子と
そこには、神の中でも、その知恵を讃えられる者が集まっていた。
その他に、あと一柱。
「お呼び立てして申し訳ない。
神は気づいたのだ、
「
人は突然変異を起こすのだ。子供となればなおさらだ。イエス・キリストの例がある、たった一代で
そんな前例がある、だからクー子は強い声で糾弾した。
「わかっておくれ、これは儀式なのだ。他の神々を説き伏せる、布石なのだ。だから、底津を連れてきた。俺は、
大国主も
だが、そんなことを神々はわかっていた。だが、立場がある。議論は尽くされ、そして、権威としての立場はそれに従った意見を叫んだ。ただ、その事実が必要だったのだ。
突然、その間の扉が開き、赤ら顔の男が入ってくる。
そして、渡芽に斬りかからんとした。
「
クー子は
「どけ、野良狐! そのクソチビが歩いてんのは、
男は叫んだ。自らの子、その
「いい加減にしてください!」
クー子はそう
だがそれは、あまりに呆気なかった。
「ぐふっ!?」
突き飛ばされた男は、壁に打ち付けられ、苦しげに息を漏らす。
「やりやがったなぁ? 俺は最高神の父だぞ……どうなってるかわかってんのか?」
この男が、悲しくも
「自分の神格如き! 命ごとき! くれてやれない神なんて糞くらえです! 私はね! みゃーこやクルムのためなら、いつだって命かけてやりますよ!」
クー子は、最悪自分が死んでも、他の稲荷が二人を育ててくれると信じていた。
クー子は、
鋭い音が響き渡る。
「あれ?
違和感は感じていた。だが、それは心の底からありえないと思うような出来事だったのだ。
位が高い神が強いのではない。道を進んだ神が強いのだ。最も古く、最も進んだはずの
「イサナキ様。この者の処分は
思えば違和感だらけだったのである。いずれも主神、正一位。
誰も、
傍観は、つまりクー子の味方であるということになる。
「チッ! わかったよ……」
「抱きしめてあげればいいのに……」
「これが、
「立場上、
なんとなく、クー子もこの投票がわかってきた。再度投じられた
「すまんな、おっちゃんも
「稲荷……」
まずは
「稲荷……」
ほぼ同じ文言で、
「ちなみに、クー子さん。あなたも投票権を持ちます」
そう、稲荷に入る票を四つ集めるために、
「稲荷で!」
クー子は安心して告げた。
こうして、緊張の糸は二つ一気に切れた。
クー子は膝が笑ってもう立てない。
「抱きしめればいい……」
「怖かったよね。ごめんね!」
立てなくても、力が入らなくても
「好き……!」
もう、手を離される事などない。それに、これからその証がすぐに手に入る。
「落ち着いたら
そう言って、神々は部屋を後にする。家主である
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