第54話・おっちゃん大明神
第二席、コクマー。父性、すなわち文化と知識を与える神々の座す場所。
「みゃーこ、クルム! ようこそ、お祭りの中心……」
「
クー子がその場所を紹介しようと、張り切って声を上げていると、後ろから現れた恰幅のいい男にそのセリフを横取りされる。
クー子は、その声に聞き覚えがあった。まるで油を指していない
「あなた様は!!??」
「誰……?」
訳も分からずノるみゃーこと、少し怖がる
「おっちゃんは、
彼こそが、
「
クー子はこの
「そんだけ馬鹿でかい妖力に神通力。神にとっては、目の前の巨人見つけるようなもんやで!」
と、言いつつも、
「クー子様、そんなにお強いのですか?」
みゃーこは改めて、クー子の偉大さを知る。
「この子、ほんまハチャメチャや! 本気でやって、おっちゃんと五分やろなぁ……」
そう、正一位は本当に規格外。クー子はなんで
「あれ? 前回七分って言ってませんでしたか?」
そう、二十年以上前の前回は
「クー子ちゃん、堪忍よ! 神通力増えてもうとるやんけ! コマ育てた影響やろ?」
勝率が変化したのは、クー子が成長したせいである。みゃーこを育てた。強く優しい神になって欲しい、そんなエゴから必死に考えた。愛情の与え方、寛大な育て方、絶対に許してはいけないこと。それらを考えることによって、道を進んだのだ。
一方、妖力は少し減っている。何かを渇望する欲深さの大部分が、なくなったのだ。クー子の妖力は現在、親離れしないで欲しいという思いが産んでいるものがほとんどだ。
「この、クー子様が強くなられていたのですか!?」
みゃーこにとっては理不尽極まりないほどの強さだ。当然、なにせ中津国最強だ。
「せやで! ほんま、化物や!」
クー子の強さは、洒落では済まないのである。
「あはは……」
戦闘能力は、それなりに闘う稲荷神族では、ステータスの一種だ。クー子は、褒められて照れくさかった。
「ところで、そっちのチビべっぴんちゃん! もしかして、おっちゃん、顔怖い?」
ずっと、クー子の後ろに隠れている
しゃがんで、目線を合わせるも、恐怖のゆらぎがあって傷ついた。
「人間……」
そう、
「もしかして、人間怖いんか? ほな、おっちゃんも怖いわな。したっけ、ええもんあげるさかい。ゆるしたってや!」
そう言うと、
「わたあめホイ! りんご飴ホイ! チョコバナナホイ!」
小槌からはどんどんと、
「あの、そろそろ止めてください!」
あまり出されすぎると、
「おっちゃん、まだ詫び足りひんのやけど……」
本当に、太っ腹すぎて困る神である。お詫びは、かこつけだ。別に何もなくても、大量にくれるのである。
「いえ、本当にもう十分ですから!」
その証拠に、
「ほな、とりあえず、三人でわけたってや!」
そう言って、
「ありがとうございます……」
断るわけにもいかないのが、下級神の辛いところである。だが、この量なら問題はなかった。問題は……。
「ヒルコちゃんの、ちょっといいとこ見てみたい! あそれ!」
これが無限ループするのだ……。
クー子の心が悲鳴をあげたところで、ぼふんと煙が吹き荒れた。
「クソデブ大明神いい加減にしろおおおおおおおおお!」
そして、その煙の中で、黒い水干を着た男が綺麗な飛び回し蹴りを、蛭子命の顔に決めたのである。
「ふべっ!!??」
「主神けっちゃっったああああああああ!?」
クー子は、驚いた。
「どなた様!!!???」
みゃーこは訊ねた。
「……!?」
「クー子様お逃げください! 持ちきれないほどお土産持たされる前に!」
煙が晴れると、そこに髭を生やした平安人が佇んでいた。
「ありがとう、
クー子はそう言って、二人を抱えて逃げたのである。
蹴りを入れた彼は、
道真の怨霊とされているのは、全て
尚、彼は、
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