第51話・高天ヶ原の狂乱
第一位の席ケテル、大国主が座るそこも、階段の奥に見える。そして、さらに奥まで……。
「YO! 盛り上がっていこうぜ! 今日の一曲目!
この例大祭で最も羽目を外すのは、そのケテルの奥の神である。彼こそ、
彼は、普段は根の国に居る。そして、
そんな彼は、北欧ではロキと呼ばれている。デーン人が初めて彼を目撃したのが、今回のようなコンサートを始めた瞬間だったから。
「YEAAAAAAAAAAAAA!」
彼の神族、
「行くぞ! 1,2,3!!」
歌が始まると共に、神族一同踊り狂った。こんな姿を見せられれば、混沌とした遊びの神を思い浮かべるだろう。
「賑やか!」
なにせ、もともと人間型なのに、全然人間に見えない神々である。現代、すっかりロックンローラーなパリピ集団なのだ。
「なんというか、とても羽目を外されますね……」
みゃーこは少し引いていた。なにせ、羽目のはずし方が常軌を逸している。
「普段は根の国から
そして、そのどんちゃん騒ぎも、祭りらしいから放置してしまう。神族自体が、若干パリピ寄りかもしれない。
「上行こ!」
改めてクー子が言う。閣僚的な神々の席は、階段状に設置されている。上に行けば行くほど、位の高い神が居る。そして、最も賑わうのは上から二番目だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
クー子達は、とりあえず一つ上を訪れた。ここにも用事があったのだ。
「
こんなセールスだが、それをやっているのは女神だ。彼女は、男性のふりをしている。
「みゃーこ、クルムの耳塞いでて……」
「はい、クー子様!」
これから行う交渉は、
「
クー子が言った。これが、最も彼女に特攻のある値切りなのだ。そんなことをしているクー子はもちろん、悪人の笑みを浮かべていた。
「あの……俺、主神なんだけど?」
詰め寄られた、彼女は既に顔を赤くしつつある。
「知ってます。ですので、下級神としてお慰めさせていただこうかと……ね? カナちゃん様」
歌うように、甘い声でクー子は囁いた。
「あの……えっと……」
「よそ見をされては傷つきます。私では、魅力不足でございましょうか?」
頬に手を添えて、顔を強引に合わせる。そうとは言わせないと言う、圧力をかけながら。
「ゆ……許ひてくらはい」
金屋子神は百合豚である。女の子は女の子と恋愛すべきと思ってるタイプである。別に男性が嫌いなわけではない。だが、NLを許容しない。よって、非処女が嫌いなのだ。
あと、自分に自信がない。鍛冶をやっているから、自分は筋肉ダルマなのだと思っている。顔もすす汚れて汚いと。だから、男であると言う仮面をかぶっている。
「怒ってるとお思いですか? 私、可愛らしいあなたを手折りたいだけです……」
クー子は囁く。吐息を耳に触れさせながら。
「らめ……ゆるひて! こえ、あげるかりゃあああああああああ!」
とうとう限界を超えて、
クー子には、なぜこうなるのか全くわからなかった。だが、
「本当にタダで手に入っちゃった……」
ポカンとするクー子。
扉に隠れて
「やっべぇ……稲荷神族やっべぇ……」
神々は常々思っている、金屋子神はいつになれば自分も美しい女神であることを自覚するのかと……。
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