第47話・九字
みゃーことの組み手が終わると、今度は
振り返ると
「強い!」
「ふふん! 実は、
正確には正一位のほとんどと、従一位のごく一部を除けばである。
すべての神が基本的に戦闘能力を有している。正一位は道の踏破者であるため、妖力及び神通力が桁違い。それでも、戦闘が苦手な神族もいるのだ。
そして、さらに例外がある。数多なる道を歩む
「クー子様、若干幼児退行してません?」
人化を解いたみゃーこが、クー子の膝の上でじっとりとした目をしていた。
「うっ!? そんなことより、クルムも妖術練習! まずは、九字から!」
神の精神年齢は気分でも変わったりする。無限の命を持つがゆえのことだ。
「やる!」
「じゃあ、まず、指を二本立てて。これを、刀印っていうの」
クー子もそうしてみせた。九字切りは、人の世でもよく使われる術式。妖力を持たなくても効果を発揮する、陰陽道の入り口だ。
「ん!」
渡芽はそれを真似して指を立てた。
「まずは横に払って、
クー子が妖怪退治に出たときに、陽がやっていた術式。力を持つものがやれば、それはかなり強力だ。
他の術式を混ぜることも、その術が簡素であるがゆえに、可能である。
「臨!」
渡芽は兎に角真似をした。
「次は縦、兵! 臨で切り始めた場所に寄せてね!」
「兵!」
九字として意味を成し始めたその指先は、既に淡い光を帯びていた。それはまるで、剣に反射する陽光のようだ。
「クルムの神通力はすごいね! さすが数多だよ! さ、次、闘! 臨の下を切る!」
そうしてクー子は、丁寧に一字一字を教えていった。
「前!」
「うーん、結構力が強いなぁ……。祓う対象がないから、護法として体に残るのは想定内だけど、目に見えるなんて……」
それは、ある程度一人前に認めることができてしまう神通力の証拠だ。神通力がその水準に達していないと、全身に拡散して光を失うはずなのだ。
「おおおおお!」
ただ、そのファンタジー感に圧倒される
「まぁ、とりあえず……。この紙に、その力を移しておこっか!」
クー子は袂から小さな紙札を取り出した。
「ん!」
「はい、9級神器です!」
9級でも神器は神器。陽は例外として、霊能者などが数ヶ月かけて作るような代物である。
余談……。神社などで売られているお守り、その中でも高級なものに10級神器は混じっている。
「神器?」
「そうだよ! かなりすごいお守り。使い捨てになっちゃうけどね……」
ついでに言えば、必要になる状況はまずないだろう。着ている服が、強力な神器なのだ。神と生活していれば、周囲が神器まみれになるのは仕方のないことだ。
「作った!」
使い捨てだとしても、思っていたのと違うとしても、嬉しかった。神に近づけたのだ。
「でもなぁ、とっておきたいなぁ……。クルムが初めて作った神器……」
ほいほいと作ったものであっても、その成長を見守る立場からしたら記念品だ。
「いる?」
「すごく欲しい!」
初めての術が保存された、お守り。初めての神器。クー子が欲しがらない訳もなかったのである。
「クルム。クー子様は、
育てられる側は、恥ずかしいものである。そして、呆れるものだ。それは、アルバムに似ている。
「だってだって、いなくなっちゃうんだもん!」
またしても、クー子は幼児退行して、駄々をこねた。
「
それは、クー子である。だが、それは強がりを含んだ願い。変わらないで欲しいと、祈っているだけ。
「でも、思い出は残したいもん!」
本音は、こちらにあった。
「ふふっ」
心の底からの愛情を感じて、
―――――――
また更新予約を忘れてしまいました。本当に申し訳ございません
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