第30話・身代
次の日、
『畏み畏み申す』
神に距離は関係ない。正三位以上なら一度訪れた神の社へ転移が可能。従一位を超えれば、神の社へは無制限である。よって、
「あれ? たまちゃん。何あった?」
この、畏み畏みが、電話で言うコール音を担当しているのが可笑しなところだ。
『あ、クー子様。VTuberのお話を
主神の頼みは、聞いておけば大体功績に繋がる。自分で神々に利益をもたらしてもいいが、神の主な収入源は主神の頼みだ。これまで稼いだ功績の総量で、正二位までは
「あ、うん。あの人たち何かあるの?」
VTuberをやっていることを、主神は一切咎めなかった。これはもう、公認だ。以降、クー子は一切隠す必要がないと悟った。
『それが、二人ほど
日本では、ホイホイと気軽に道に入る人間が居る。なにせ、示されている道が多いのだ。だだし、本当に神に変ずるまで進む人数は逆に若干少ない。日本で神がいい加減なせいで、大和民族も若干いい加減なのである。
「秋月? 秋葉って言う人なら、最近見に来てくれる人だけど……」
と、クー子は言った。
『
「えええええええええ!?」
クー子、またしてもリサーチ不足である。
というよりも、信じられようはずもなかったのだ。なにせ、クー子はまだ二回しか放送ができていない無名個人勢な新人。否、
それが、VTuber大手に目をつけられるなど信じることができるわけもないのだ。騙りと考えたほうが、まだ妥当である。
『では、お願いしますね!』
その言葉を最後に、術による通話は途絶えた。
Linneでもよかったと
「みっちー……ちぃ……」
ただ、とてつもなく驚いた出来事だったのである。
「終わり?」
神の仕事の終わり、それを待っていたのが、彼女のコマである。
「うん、終わったよ! さて、今日は何をしようか?」
「神楽などの勉強はいかがでしょうか? お勉強の中でも、とても楽しいものです!」
それもいいと思った。なにせ、起源は神々のどんちゃん騒ぎである。だが、このどんちゃん騒ぎというのが神の世界で重要なのだ。
「狐……なる……」
渡芽の願いは、それだった。周りには、母性溢れる狐の神ばかり。ならば、そうなりたいと願うのは自然な流れだった。
「渡芽ちゃん。ごめんね。出来るかどうかもわからないけど、すぐには絶対できないの……」
稲荷の秘術は、他の動物で応報の道を含んだ道を歩むものを、狐神へと変じさせるものがある。だが、それは誰にでもできるわけではない。
「嫌……なる!」
上辺すら約束してくれないクーコを見て、
こうなるのは、クー子もわかっていた。だけど、約束をしてしまえば、叶えられなかった時の傷は、時間によって指数関数的に大きくなることを知っていた。
「手は尽くします! それではなりませんか?」
みゃーこは、
「嫌!」
拒絶を感じると、その要素が取り除かれるまで立ち直れない。それが、幼い心だ。
天照大神曰く、幼さとは、心と体の総量が少ないこと。故に、小さな絶望すら、大きく思えるのだ。小さなものが大きく見えるのは、心も体も同じであると。
「
クー子は渡芽を呼ぶ。稲荷の社には必ずそれが飾られている。稲荷神族を表す狐面。それは、社の最奥にあった。
これがないと、神が死んだとき、そのまま根に下ってしまう。そんな、大切なものだった。
「
人の身でそれを身に付ける、それは人に巫女の役目を負わせる。ただの巫女ではない。存在自体が、身代の主に近づき、力を与えられた巫女だ。
クー子の身代を被せるのは、
「うん、ここまで望むなら、そこまでやっても多分いい」
クー子に絶対の自信はなかった。あとで、
「みの……しろ?」
人が知るよしも無いもの。人が、神は不死であると思う原因。それを、渡芽は目にした。
「私のもう一つの命。大切に使ってね」
そう言って、段から下ろし、クー子は
「う、うん……」
緊張はした。だけど、拒絶されたわけではないと知った。
渡芽は分かっていたのだ、狐になるなど無理なのだと。上辺の約束が欲しかったのだと。だが、その愛の深さにたまらなくなった。
無論、神だからできる。そんなことは
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