第27話・稲荷
クー子が
「骨……抜く……終わり!」
それには、既に
「
やっぱり、
「二人共、よく働くじゃないか! こりゃ、くーちゃんも褒めざるを得ないだろうよ!」
自分のために、やってくれているのだ。こんなものは、コマ育ての
そして、それを引き出したのが、二人の胸の中にいる自分だった。それが、嬉しくてたまらなかった。
「ほんとだよ! 二人共、すごいよ! もう、ほんと偉い!」
感極まったクー子は、そんなふたりを後ろからそっと抱きしめる。
「えへへ……」
「頑張っておりますぞ!」
二人共、自分の仕事をそのように誇るのであった。
「うんうん! 二人共、よく頑張ってるね! すごく偉い!」
クー子は、
「あんたも頑張ったじゃないか! 外に出て、目を作ってきたんだろ? 偉いじゃないか! くーちゃん、あんたはよくやってるよ。おかえり」
そんな
「私は、こんなことで褒めてもらうほど子供じゃありません!」
そして、それは正しく道先として機能する。
「大人になっても褒められていいし、あんたのやったことはすごいんだ! 胸張りな!」
一度固辞することで、稲荷神族というコミュニティの、暖かさを示したのである。
大人になっても、いくつになっても、褒めてくれる人はいる。3000歳が、褒められているのだ。未だ年齢二桁のコマたちは、気の遠くなるほどの未来までそれが保証された。
「その……ありがとうございます……」
そうまで、褒められては、クー子も照れくささに耳を垂らし、されど嬉しさに尾を振るほかなかった。
「二人共、くーちゃんが帰ってきたんだよ。言っておやりな」
二人は気づき、一旦手を止めて振り返る。そして、微笑んで言った。
「おかえり……」
「おかえりなさいませ!」
それが、嬉しくて、可愛らしくて、クー子にはたまらなかった。
「うん、ただいま!」
屈んで、二人の頭を撫でた。内心では、悶絶していた。
「居間で待ってなよ! メシは、あたしと二人に任せな!」
他にも、魚は煮付けにするつもりらしいし、
「はい、じゃあ休んでますね! 二人共、
「うん……」
「はい!」
それぞれに、反応を返した。
「あんた、あたしが
「そうですか?」
人間の子供に必要なものが足りないのではないだろうかという、クー子の不安はそれで和らいだ。
子供じゃない人間は、見た瞬間悲鳴を上げるようなクー子が、おかしなものである。
「あぁ、あんたは立派な母親だよ!」
という、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「大丈夫……。
コマになったばかりの元妖怪。これは、しばらくは大変な時期である。
「
きっと、
「うん。その気持ちは、とっても尊いものだよ。だから、大丈夫……」
優しく撫でて、
この時期のコマは、罪悪感に苛まれて
それが全て、一様にはできないということを理解するまで、それを脱せない。心は良かった、だた行いは良くなかった。そう、理解して初めて、次に進むのだ。
「
それに対して、
「今、叶わないだけ。叶えてあげるからね」
玉藻前は、探しているのだ。
「歌が上手な人なんだね? 私も、それ探すね!」
クー子は、
これが、接点。後に、クー子のある面を支える、事の始まりである。
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