第18話・渡芽
彼女は死後はまだ、
だからこそ、クー子は確認する必要があった。
「さて、最初のコマ修行が終わったから、
渡芽が
妖力は、その人物の道をある程度特定できる手がかりだ。確かめるためには、肉体を接触させた状態で、特殊な神術を使わねばならない。だから、クー子は狐に戻った。
「よう……りょく?」
普通に生きていれば、そんなものはただのオカルトだ。存在を知らないまま死ぬ人間も、少なくない。
「
みゃーこはそう祈った。
「手を出してね!」
「うん……」
「稲荷の
これは、神として魂を覗くための神術。そして、術を受ける側にも拒否ができる。
「怖い……」
それは、魂を丸裸にされるようなもの。今の自分の在り方、そして目指す先。それが全て見えてしまう。
「大丈夫……。悪い道なら戻してあげる、いい道なら案内してあげる」
それが、道先。コマを持つ神の、役割の一つだった。
「捨てる……ない?」
「もちろん。だから、見せて。
で、あれば……。
「うん……」
クー子の術によって引きずり出される、
「え!?」
それは、とてつもないものだった。彼女が見たのは、あまりに壮大な道。彼女の心は、全ての道に続いていた。善も悪も、そのどれでも、いつでも渡れる可能性の道。彼女は、渡芽と言う名が示すとおりの道を形成していたのだ。
「何……?」
「ごめんね。ちょっと、凄すぎて……。でも、すごいことなんだよ!」
何がすごいという次元ではない。何においても、すごい道である。容易く悪に染まり得るが、主神たちすら超えかねない。その道の名は、
「すごい……?」
「うん! 本当に!」
こんなに容易く移ろう道。ならば、導けばいいだけである。でも、ほんの一抹の不安はあった。こんな道を持つコマを導けるのか……。でも、
「
複数の道を進める
「
クー子は興奮気味に答えた。だが、クー子は
「
みゃーこがそう言って泣きつくから、渡芽は
「居る……」
だって、先程まで、その心配をしていたのは自分だった。いつ追い出されるかと思っていたら、あべこべに引き止められたのだ。
「まぁ、50年くらいは最低でもいてもらわないとね!」
それが、コマの卒業の、最短記録である。それ以内に出て行かれては、たまらないと思った。
「おばあちゃん……なる」
少なくとも六十歳を超える。片足だけだが、おばあちゃんに突っ込んでしまう。
「なるんですか!?」
「ならないかも……」
そんなことも、神の世界では時たま起こる。人から、現人神になって、完全に神になる。そうなったら、外見年齢は気分だ。
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