第14話・神話の目撃者(ガチ)
みゃーこは、既に一人で入浴ができる。と言っても、一緒にお風呂に入るなどというのは、強烈な愛情表現だ。それは
それと同時に、考えた。
とりあえず目下の問題は
育てるコマが二人になると、考えることは二乗である。これは、葛の葉の言葉だった。
その、具体的な獲得方法を、わかってもいないくせにである……。
「コンコンにちは! クー子です! 油揚げ大好き、お狐妖怪! 今日も、楽しく配信しちゃうよ!!」
クー子は特に放送の内容などは決めていない。VTuberであれば、ゲーム実況などが主流だが、クー子が知っているVTuberは陽だけ。陽は……
みっちー:今日も見に来ちゃった! 相変わらず、すごいモデルだね!
そぉい!:本当に謎よなぁ……。どうやって動かしてるんだろう……。
ポリゴン:いやもうほんとに……。毛の一本一本に大量のポリゴンと、ボーンが組み込まれてるとしか思えない……。
基本的なVTuberの
「手作りだもん! うごくよー!」
だが、そもそも、クー子の体には物理演算ではなく、物理現象が直接作用している。
神族基準の
デデデ:うっそおい! 超美麗3Dにもほどがあるだろ!?
秋葉孔明:どうやってこんなの作ったんだよ!?
実のところ、みっちーという視聴者は企業勢のVTuberのサブアカウントであり、もうひとつの顔だ。超大手VTuber事務所、株式会社秋葉家。VTuber事務所が、広域指てぇてぇ暴力団と呼ばれる原因となった企業だ。その、代表取締役の、3Dモデラーとしての顔。それが、みっちーである。
クー子は、とんでもない団体に目を付けられていたのである。
「て、手作りだよ!」
そんなこと、クー子は
そして、視聴者は、手作りとは企業秘密のことだと理解した。
みっちー:まぁ、おしえてくれないよねー……。
ポリゴン:どこで、モデル作成依頼できるんだろ……。
I・K:いや、売ってもらっても動かせんだろ?
視聴者は順調に増えていった。情報は二つの経路で拡散されている。
秋葉家経由と、モデラー経由。今は、3Dモデルとしてのクオリティが高すぎることが主な話題だ。
だが、この日、クー子の話題の種類が増加する。
みゃーこたちの物音を、クー子の妖術マイクが捉えてしまったのである。
そおい!:男か!?
デデデ:いや待て! ペットかもだろ?
ポリゴン:ヤコちゃんかもしれねーだろ!
I・K:hmhmヤコちゃんなる人物がいるのか……
秋葉孔明:
秋葉孔明は、前情報を得ていた。同一事務所のみっちーから、裏で話を聞かされていたのだ。としても、
そして、デデデだ。彼は、炎上を瞬間的に防いだのだ。
「そうだ、紹介しよっか! ヤコちゃーん! わたー! 入ってきて!」
そう、声をかけてからクー子は一言。
「わんっ!」
人化を解いたのである。
さすがは神、そしてさすがはネット初心者である。リテラシーなど存在しない。
ふすまが開かれる。カメラが
「コンコン!」
人化の前段階、幻術をクー子は渡芽にかけた。これにて、渡芽は別人の姿になった。この幻術は、木の葉などを使わないといけないのである。
視聴者は、新しく二人が放送に加わるも、それどころではなかった。
I・K:狐形態があるだと!?
ポリゴン:ヤバイ! こんな立派な狐いるわけないのに、説得力がヤバイ!
そぉい!:マジで空狐なんじゃね? 妖術で配信してるとか?
デデデ:究極にもふい
秋葉孔明:なるほど、アクセサリーの呼び出しワードを決めてあるのか……。
個人勢の、しかもVを名乗っているだけのUtuberが、VTuber最大手に影響を与えた瞬間でもあった。
「紹介するね! こっちの狐がヤコちゃん! 初配信の時に名前が出てたでしょ?」
クー子はコメントなど見ていなかった。
クー子が紹介すると、みゃーこは前足をちょこんと上げる。
「ヤコです! 野良の狐妖怪でしたが、今はクー子様の
コメントはみゃーこの愛くるしさに加速する。しっかりと手入れをした狐というのは、それだけで可愛らしい。しかも、みゃーこの場合、礼儀正しいのだ。
「それで、こっちがわたちゃん。この子がいるときは、私は狐の姿になるの!」
渡芽のハンドルネームは考えていなかった。よって、苦し紛れに名前を縮めることにしたのである。
「わた……」
そして、小首をかしげる渡芽。
視聴者は既に、炎上騒ぎを起こすどころの話ではなかった。なにせ、
世界観が、完成していた。まさに、神話の1ページだった。というか、本物の神話の1ページである。
神と、神にならんとする妖怪、そして神に助けられた人間。その本物が、妖術によって配信されているのだ。映像を見ただけで、
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