第13話・尾で触れ、雪ぐ
だが、その考えは答えを得ないままに終わった。今、かけている迷惑を、取り除くことを優先したのだ。
「人……なって!」
それが最大限。生存の欲求という根源的な欲求を、満たすために必死で考えたことだった。
「いいよ。でも、理由、聞いてもいい?」
クー子は言った。人は怖いはずだ。クー子の人化はそれにすごく近いレベルである。
「いつも……人……。便利……違う?」
翻訳するのであればこうだろう。普段は人の姿をとっているのだから、そちらのほうが便利なのではないか、である。クー子はそれを理解した。
「そっか。私のためってことなんだね! ありがとうね! でも、怖くなったらちゃんと言うんだよ!」
全力で、クー子は
「コンコン!」
人の姿のクー子、それはとても優しそうな女性である。その服装は、巫女に少し似ていてるため、
身長は、女性にしては平均をほんの少し超えた160cm。髪は長く、狐色。大人っぽさを充分に帯びている。なのに、どこか可愛らしく見えてしまうような顔立ちだった。
「ちが……う?」
それは、
だが、目の前の女性の髪はどうだ。秋の
「怖くない? 大丈夫?」
人の姿へと
上から見下ろされるのが怖いのは、全生物共通だ。神だって怖い。
だから、クー子は、話すときは目線を合わせるのである。これは、無意識だ。
「だい……じょうぶ!」
クー子もほんの少しの無理が必要なのは、つい先日わかった。
「こうしよう! お風呂に入る時だけ、この姿! それ以外は、
クー子は、そのようなつもりでいた。
そういえば、
「お、お風呂……」
「お風呂怖い?」
何らかの原因で、そうなったのではないか。一つ一つほぐすように、クー子は
「苦しい……」
あろう事か、
「じゃあ、シャワーだけにしよっか!」
クー子の社には、神の家としては珍しくそれがあった。一般家庭のそれとは形が違う。クー子が欲しいと考えて、作ったのだ。
だが、クー子は本当に悩んだ。どうしたら、それが結びつくのか疑問で仕方がないのだ。いや、候補は見つかっている。だけど、そのどれもが悲しく、どうしたらそんなことをできる心が生まれるのかわからなかった。
「うん……」
でも、シャワーはわかる。
本当に嫌な考えだった。クー子は、
「いこー! あ、手は……人間っぽいから尻尾!」
クー子は人間らしい部分を用いての接触を、とりあえず避けた。恐ろしいものとの、距離を少し確保させたのである。
クー子は尻尾で、背中をやさしく押したり、前に立って尻尾を振って追いかけさせたりと工夫を凝らした。無論、本性が狐だからできることである。
「うん……」
そのしっぽの触れる時の力加減、そこに
少し怖かった。でも、ついていってもいいと思えた。そんなこと、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
風呂場にて、クー子が服を脱がすと、
本当に、痛ましい。だが、それは
人間らしい部分からは距離を、故に洗うに用いるのは、またも尻尾。流すときも、水を直接かけず、尻尾に水を含ませて拭き取った。
クー子はすっかり、しっぽの筋肉を
――――――
ご挨拶
毎度ご覧下さり心よりお礼申し上げます。
今回ご挨拶させて頂くに至ったのは、ルビのことです。
作者には読者様一人一人の
また、単語の意味が、一般的ではないと思われるものにもルビにて注釈を入れさせていただいている部分が多くございます。
気を悪くなされた方には、非常に申し訳なく思いますが、ご理解をお願いいたします。
読者様ご存知の単語にルビや注釈があった場合、その注釈はよりお若い方に向けたものです。
それは、幅広い年齢層の方に、自分の作品を楽しんでもらいたいという作者のエゴによるものです。
どうか、ご容赦頂けますと、作者も幸いに思います。
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