第5話・如律令
放送の最後、
『ごめんなぁ! 急だけどちょっと用事ができたんだ!』
神族の急な用事と言えば、妖怪退治だ。それも危険な類の……。
「みゃーこ、ちょっと外に出るよ!」
妖怪の力は、道をどこまで踏破しているかで決まる。場合によっては、完全な踏破を果たし
神族はそれぞれ、管轄を持つ。だが
「はい! クー子様!」
みゃーこは、気丈に振る舞うも内心では不安だった。クー子が二級神器など持たされている場合、
故に、みゃーこは祈った。どうか、それが
クー子は幽世を出る。クー子の
出た瞬間にクー子が感じたのは異質な空気だった。まるで、泥が絡みつくような不快な空気である。
「大丈夫、木は揺れてない……」
クー子は自分に言い聞かせた。
鳥居の奥、神社の領域には、そこを守護する神が育てた木がある。その木が揺れたならば、その神では対処が困難だ。だが、凪いでいる。完全な凪は、クー子にとって全く問題ない相手ということになる。
クー子は装備を整えるべく、幽世に戻ろうとした。だが、扉石からみゃーこが飛び出してきたのだ。青銅の剣と、高天の塩が入った小さな袋を持って。
「クー子様!
これにて、クー子の準備は万全となる。
「ありがとう……みゃーこは本当に偉い!」
コマとは小間使いの意味であり、
「ならば、絶対に無事にお帰りください!」
クー子はこのみゃーこが誇りだった。応報として、クー子の無事を願ったのだ。こんなもの、聞かなければ
「ぜったい、帰るよ!」
そう言って、クー子は駆け出した。神に最も近い妖怪が全力疾走をしているのだ。それは、音よりも尚速かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
クー子が気配を辿りその源に着くと、黒い影と退治する一人の少女が居た。
「防ぎ給え!
影の動きはさほど速くはない。だが、少女をどこまでも追い続ける。それは、肉体と命を
少女の言葉で符が舞い、板状の結界を出現させる。それは、高度な術式だった。
破壊力で言えば最強クラスの一撃。それを防ぐ結界は、普通、人間が構成するのであれば、長い詠唱と神族の介入が必要だ。それを独力の、しかも短縮詠唱で行なった。それは、術者の少女が、道を踏破する寸前に在ることを示している。
「皆!」
一瞬の隙に、少女は指二本を束ね、その声とともに影を切りつけた。
「助太刀するよ!」
そう言いながら、クー子は
クー子の中には確認したいことが山ほどあった。
「待て! それは
だが、それを脇においてクー子は事態を理解した。
今の一撃は理解が済んでいないがゆえの、
「わかった! あなたの
クー子はその妖怪の攻撃をすべて防ぎながら、少女に問いかける。今この瞬間に必要な問を。
「一瞬だけ憑依を解ける!」
クー子にはそれで十分だった。
「
少女はクー子の言葉に頷き、信頼して前に進む。少女にはクー子が神族であることが分かっていた。二級神器は、人間の世界では三種の神器に次ぐものである。そんなものを持つのは、今となっては神族と
「陣!」
それも本来はおかしなことだ。この妖怪に人が触れようものなら、その瞬間に触れた部分が
そんな肉体による攻撃を、クー子は縁月で防ぐ。それもまた、妖怪の力を削り取った。
「烈!」
「在!」
クー子は余裕が生まれ、次の段階への
「
その
「前!」
一瞬、黒いもやの中から小さな少女が現れる。クー子と共闘している少女より、もっと幼い子供であった。
「
塩を浴びせ、
ただ、この
妖怪を殺す
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