第3話・殺生石
しばしして、朝食が終わり、二人が縁側でくつろいでいる時のことである。それは唐突に訪れた。
五つの尾を備えた、またしても狐の耳と尻尾を備えた美女一人。
「あれ? たまちゃん?」
彼女こそ
元は九尾の狐であったが、天狐へと昇格し、神の仲間入りを果たしている。本来天狐の尾は三本。だが、訳あって、
「たまちゃんはやめてって言ってるじゃないですか!? 一応、今は稲荷やってるんですから……」
この
「ちゃん様こんにちは! 御用が済んだら
みゃーこはそう言って、前足をちょんと上げた。
「クー子様の
家族にたとえて
「はい!」
一旦みゃーこが返事して、クー子と
「たまちゃんって可愛いじゃん……」
僅かに拗ねたようすを見せるクー子。
「
だが、それでも捨て置けないのが玉藻前である。
日本には様々な神族が存在する。中でも
「いいじゃん!」
「御利益が違うんです!
稲荷神族は農作特化、
「ところで、ちゃん様は世間話のためにいらっしゃったのですか?」
意外にも、しっかりしているのはみゃーこ。比べるのであれば、クー子や玉藻前は割とポンコツかもしれない……。
「そうでした……。
商標登録など神には恐ろしくない。人間には、それを知る術がないのである。
「えっと……どなたから?」
クー子にとって嫌な予感である。
「宇迦之御魂様より、
「
二級神器は、極めて強力である。
「主神様方、今忙しいんですよ……。なんか、海外の魔術師の一派が日本の
主神を端的に言うなら、内閣である。つまり、その一件は外交問題に酷似しているのだ。
「うぅ……仕方ないよね……。わかった頑張る! 私も稲荷神族だもん!」
それは、クー子にとって重い決断だった。なにせ、妖怪退治を始めれば引きこもりを続けてはいられない。
「その意気です! 本当は私なんかより力を持ってるんですから、退治自体をささっと終わらせて帰ってくればいいんですよ!」
実を言うと、
「ニンゲントソウグウスルマエニカエルヨー」
クー子は人間が怖いのである。さもありなん、かつて人間に自己実現の欲求を手折られた狐妖怪である。
「あはは、それがいいでしょう! さて、みゃーこ。あなたの成果を見せてくれますか?」
本題は終わり、世間話へと戻る。
と、いうよりもこれは、
「かしこまりました! お狐わんわん、人になーれ!」
みゃーこがそう唱えて空中で翻ると、みゃーこは人の姿に近づいた。とはいえ、体毛は普通に狐であるし、骨格にも狐の名残がある。その身長は115cmほどと、超低身長だ。これは、しっぽも含めたみゃーこのもともとの体長と同じである。
「みゃーこ頑張ったから、ここまで人間になれるようになったんだよ!」
と、クー子はみゃーこの不完全な人化を誇らしげにアピールする。
「だいぶ人化できるようになりましたね、みゃーこ! でも、わんわんは人間が持つ狐の印象から離れてます。次はこんこんにすると、より人っぽくなれますよ!」
「あはは、稲荷神族ならしばらくはここで苦しむよね……」
と、クー子。狐はイヌ科で、わんと鳴く。その癖が人化の術を不完全にしてしまうのだ。
「なんで、こんこんなんでしょう……?」
みゃーこには、それがわからぬ。そもそも人とあまり会ったことがない。
「みゃーこ、遠吠えをして見てください!」
「くぉーん!」
人間にしてみれば、狐と
「はい、それのせいでこんこんと鳴くと思われています!」
「なるほど、納得しました!」
「何にやにやしてるんですか!? クー子様!?」
だが、それでも
「だって、たまちゃんもそろそろコマを育てる時期かなぁって……」
クー子は
コマというのは、保護された妖怪のことである。神族は、妖怪が間違った
「私は、クー子様のコマではありません!」
だが、二人共、
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