第9話

耳を澄ます。風の音や風に当たって葉が揺れる音が聞こえて心地良い。瞼を閉じていても眩しくて、このまま寝ていたいと思う。


一方、あんまり回らない頭で俺倒れたんだっけ? と他人事のように現状を確認する。


「起きましたか?」


頭上から優しい声が掛かってとても眠たいと思う欲求が一層高まるが、無視してゆっくりと瞼を上げる。


 明るくて目がチカチカするが、だんだんと目が慣れてくると見慣れた金髪が目に入る。


「セーニャ?」


頭を動かして彼女を見ると目が合う。碧い目は嬉しそうに細められる。


「何かあったんですか?」


さっきの状況を思い出して、テンプレに当てはまるのを思い出す。


「魔力の使いすぎかなー?」


やっべぇ、やらかした。とまだ霧がかったような脳を稼働して考えた。


「ライザと何かありました?」


 答えようとして意識を戻すとセーニャの顔が近くにある。


……は? なんで知ってんの? つか、近くね?


やっと目を覚まして正確に現状を把握する。


今、俺膝枕されてんじゃん!


……いや、別にドキッとかしてないし。


 俺は男だから少女漫画的展開求めてないし。まず、思春期男子だから。いや、まず照れてねーし


まずセーニャは激まず飯を自分で食べず、主人に食わせるやばいやつだし……




……いや、なんでコイツに照れてたの? 


頭がやっと冷静になって思う


  セーニャ、恐ろしい子。


 ふざけたことを考えながら起き上がって、様子をうかがい合う。先にこっちから質問をする。


「いつから?」


誤魔化しが効くか考えながら答えを待つ。緊張で体が強張るが顔は出来るだけ澄ます。


「4歳のあるときから、2人がたまに気まずそうでしたし、それを隠そうとしてもっと不自然でした。」


……バレてたァァァーーーー 完璧にばれてんじゃん!


いや、これ黒歴史確定じゃん!


体が嫌な汗を掻くが、なんとか顔を保ち続ける。


「あと、顔を澄まし続けて逆に違和感がありますよ!」


にこっと笑みを浮かべて教えられる。


もう、やだ泣きたい…… 


なんで鋭いの? 涙を堪えてると背筋が凍る


「なんでそうなったのか教えていただきたいものです」


喉からヒュッと変な音が漏れる。壊れた機械みたいにギギギ……と後ろを振り向く。




「……ららっららライザ」




ライザが、仁王立ちで立っていた。彼女の笑顔から目のハイライトが消えて、ヤンデレヒロインを思い浮かべる。俺は選択を間違えると魔法もやらせてもらえないと直感がいった。だから俺は……




「僕、6歳こどもだからよく分かぁんない」




しらばっくれることにした。




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