第7話

ライザは泣き止むと真っ先に俺に謝罪する。


「申し訳ありませんでした。お召し物が……


すぐ替えを用意いたします」


90度腰が曲がっていて今の気持ちがよく分かる。


 わー直角だーと的はずれなことを考えるが立場的に当たり前かと納得する。




「僕はだいじょうぶ……ライザ、どうかした?」




 セコいけど小さい子供らしく首を傾げて笑顔を貼り付けて無知なふりをする。俺はまだ小さいし、聖人君子でもない。


 聞いたら最後、俺はライザを助けないといけない。


そんな責任は少年漫画の主人公で十分だ。




「……いえ、少し……つかれただけです……」




 ライザは俯きながら、弱々しく答えると顔をあげる。ライザは下手な笑顔を貼り付けて、俺を安心させようとする。俺が求めたことなのに、イラッとした。俺と目が合うと、その目の奥には救いを求めているように見えてほっとくことを躊躇う。


でも、異世界で何もわからない俺がどうする? 


 自分のことさえ満足にできない俺が態々、なんで他人を助けないといけない? 


それに助けてなんて言われてない。ライザは俺に助けてなんていってない。


 


「そっか……ライザいつもありがとう!」


 


ごめんね……




 喉から出ていきそうだった言葉を止める。


 そうして俺は見てみぬふりをすることにした。


その日から彼女が俺の魔法の訓練を待つことがなくなった。


 最初から、待つのは初めの日だけかもしれなかったけど、前と変わらないはずなのに俺たちには見えない大きな壁ができたように感じた。






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