第6話

「ライザ……ライザ、ライザ!……ライザ!!」


 


 泣きそうになりながら声をかけると、ライザは俺に顔を向ける。だが、その目の焦点は合わない。


 その目が不気味で足が竦む。するとライザの目はやっと焦点があう。俺を見るとライザは怯えた顔をすると


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――――」




ライザは壊れた機械のように謝罪を繰り返す。


呼吸はおかしくてどう考えても異常だ。


意味がわからない。


どうすればいい? どうすればいい? 


焦って思考もままならない。




「クソがっ」




 とにかくライザを抱きしめる。4歳の体は小さくてお世辞にも安心感はない。


ライザが困惑してる間にどうすればいいか考える。


 ライザは冒険者を拒否した。理由は詳しくはわからないけど、ライザは多分俺が死ぬのが怖いんだ。


 どうすればいいかわかると俺はできるだけ言葉を選んで声をかける。




「だいじょうぶ……だいじょうぶ……俺は死なないから……ここにいるから」




 ライザを安心させるためにできるだけ優しく声をかける。ライザはしゃがむと俺を抱きしめ返す。 


 その背中を優しく叩くとライザはそれに合わせて呼吸をする。


 呼吸が普段のようにだんだん戻っていく。


 だいぶ落ち着いたはずだ。昔、母さんがしてくれたように叩く。するとライザの呼吸が荒くなっていく。


 でも、それが何なのかわかるからより一層優しく叩く。


 しばらくすると、ライザの口から小さく嗚咽が漏れる。するとライザは我を忘れたように小さい子供みたいに泣きじゃくった。


 俺はライザが泣き終わるまでずっと彼女の背中を叩き続けた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る