第5話
俺は、半ば放心状態でベッドに横たわっている。
誤解しないでほしい。決して、だらけているわけじゃない!
俺はとても疲れていた。そこにライザのヤンデレ疑惑(ほぼ確定)そこにセーニャの毒ぶ……いや、味も見た目も前衛的で体や心にも驚きが提供されて、疲れている。
考えてみてほしい。リストラをチラつかされ残業したあと、クタクタになりながら家に帰ると
「ちょっと、なにしてんのこんな遅くまで? 浮気してるの? 最っ低! ありえないんだけど! 」
妻に分かっているはずなのにどやされたあと
「GPS着いてるから……何時も何処でも私は貴方がどこに居るか分かるから」
と目のハイライトを消されながら言われ、娘に疲れている中
「パパ、ゲームしよう! とっても楽しいよ! 早くやろ! 」
と悪気なしに言われスプラッターゲームをやらされるようなものだ。
……いや、妻も娘もいたことないから分かんないけど
少し休憩したあと、転生を思い出した場所の野原に行かされる。
……ああ、本当に最悪だ。魔法の勉強したいのになんでこんな所いないといけないんだろう。
「ねえ、ライザ僕ね冒険者になりたいの!」
出来るだけ4歳児らしく自分の今世の容姿を使って目を潤ませて上目遣いをする。実年齢的に大分こっちはキツイがライザは多分すごく効くだろう。
だから魔法の勉強やらせて! と言おうとしてライザを見ると俺は絶句する。
ライザは優しく笑いながら
「しょうがありませんね」
と言うと思ってた。
実際、ライザの顔は能面みたいになって、俺を見る。ライザは少し固まったあと、怒りの表情を俺に向ける。
意味が分からない。無理やり喉から声を絞り出す。
「ラ、ライザ? ね、ねぇどうしたの? ねぇ、ほんとにどう――――」
その声は情けないくらいに震えて、視界がぼやけるが、お構いなしにライザは俺の肩をガシッと掴む。指が肩に食い込んで痛い。
「痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い――――」
俺が叫んでも全く力は弱まらないどころか、目は俺を向いてるのに焦点は合ってない。
ライザは、一層俺を掴む力を強くして俺の視界もどんどんぼやけていく。
「本気ですか! 坊ちゃまなんてすぐ死んじゃいますよ! いったい誰が唆したんですか!?
セーニャですか? なんでですか? どうしてですか? どうしてそんなこと言うんですか!?」
ライザは早口に捲し立てるとどんどん声は弱々しくなる。そして俺を叱るような声は、最後懇願するように変わる。
俺が混乱しながらライザを見ると、ライザの表情は苦悶に満ちて、その綺麗な翠色の目からは涙がとめどなく溢れていた。
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