第4話

読んでみると


「人は誰しも魔力を持っているわけではない。


だから、出来なかったとしてもそれは仕方のないことである。だから気を落とさないで欲しい。だいたい魔力とは一定で――――」


要約すると魔力は全員持ってるわけじゃないからこの本が無能なわけではない。責任問題を逃れようとする話が長々と書いてある。そこらへんは読み飛ばす。


 この本によるとまず、魔力があるかを確認しろということだ。体の内側にある魔力はなんとなく分かるから感じろと書いてある。


……どうしろと? 


 俺は本に書いてあったことを疑問に思うが、集中するために床に座って足を組むと目を瞑る。所詮坐禅の真似事だ。そして意識を体の内側に向ける。


 お腹のところにほんの少しだが、魔力らしきものを感じる。


 俺は何回かやったあと、確信を持てたため終わりにする。気づくと体はとても汗をかいて髪の毛も顔に張り付いている。 


 外を確認するともう日は高くなっていて、誰か来るかもしれないため、俺は急いでふらふらな体に鞭打って部屋に戻る。


 帰りも誰にも見つからず、壁に寄り掛かって脱力すると視界の端で、見慣れたメイド服が写る。


……えっ、嘘だよね? 幻覚かな? 


 背筋が凍る。俺は壊れた機械みたいに……ギギギと振り返る。


 すると、ライザが優しく微笑みながら部屋に立っていた。ジッと見ててもライザだ。


「なんで、ライザが!?!?」  


俺が混乱してる中、ライザはとても優しく無言で微笑んでいる。その一方、目のハイライトは消え恐怖でしかない。   


「 坊ちゃま、お疲れ様でした。


すごい汗ですね。タオルをどうぞ。詳しくは聞きませんですけど、普通でしたらどこに行くかはに絶対に言わなければなりませんよ。


 しかももうお昼ですから」


ライザの笑顔はいつもと同じはずなのにハイライトがないため雰囲気もいつもと違う。俺の体はどんどん冷えていく。


 俺が固まっていると、ライザはその目のまま、とびっきりの笑顔をつくると言った。


「メイドは、主人の行動を把握しないといけませんから」


 暗に俺の行動は把握していると伝えられる。


俺は泣きそうにながら内心叫んだ。


「このメイドとの物語なんて、ヤンデレルート真っ逆さまじゃねぇかァァァーーーーーー」




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