3、絵は性格に関係ない。
運命の日。
俺はこの日のために頑張った。
どんなに鞭で打たれようと『愛の木の実』を探しては食べ続けた。
奴隷商人からしたら、どんなに痛めつけようと落ちている木の実をむさぼり食う奴隷に狂気すら感じただろう。
だって俺なら絶対に怖い。
だがそこは流石は奴隷商人と言うべきか、しっかりと仕事を全うし怯えながらもたくさん鞭をくれました。
その結果、俺のお尻は真っ赤に腫れ上がり、そして他の奴隷からは変人扱いされ好感度は大暴落した‥‥‥。
───だが、ステータスは出来る限り上げた。
【アルバート】
教養21
体力28
感性22
品位20
〜〜〜〜〜〜
容姿45
好感度──
これがお尻と周囲からの好感度を犠牲にして手に入れた、今の俺のステータスだ。
ステータスは初期の上限である20を超え、容姿以外の値は超美麗ネロさえも現段階では上回っている。
本当は令嬢達がステータスを見れない可能性を考えて容姿を上げたかったのだが、容姿は『愛の木の実』では上げられない。
───やれる事はやった。
後は選ばれるのを信じて待つばかり。
「アル、服がボロボロだよ‥‥‥」
牢屋の前に並んで立つ奴隷の俺たち。
お尻を気にする俺に話しかけてきたのはイケメンレックス君。
彼の好感度のみ何故か下がっていないのが、逆に怖かった。
「これは本当に服なんでしょうか?」
「今日は大事な顔合わせだから、綺麗にしておけとキツく言われていただろ?」
「男は中身で勝負です」
あまりにも鞭を頂き過ぎて、俺の
確かに奴隷商人に着替えろと言われたが、替えなんて持っていない。
履き替えるには作るところから始めないといけないのだ。
今の俺にそんな暇があるわけないだろ?
「2人とも選ばれるといいね」
ニコニコとイケメンレックス君。
おそらく彼は選ばれるだろう。
俺はどうだろうな‥‥‥。
「さあ、この中からこれはと思う奴隷を1人選び、育て上げ、あなた方の手腕を見せて下さいませ」
並んでいる俺達の前で、白髪に白いチョビ髭のオッサンの長かった演説が終わろうとしていた。
───これは完全にゲーム開始の言葉と同じだな。
2回目以降は完全にスキップして飛ばされるこの白チョビ髭は、王宮の執事かなんかだったと思う。
そして説明を真剣に聞いていた3人の令嬢達。
その真ん中に立っているのが、このゲームの主人公であるリディア・アンデルマン18歳。
ウェーブのかかった金髪。
背は低めだが、健康そうな肌ツヤ。
常にニコニコとしながらチョビ髭の説明を聞いているその優しい笑顔は、直視すると一瞬で心を奪われそうだ。
───‥‥‥はっきり言おう、こいつめちゃくちゃ可愛い。
先程リディアのステータスを盗み見たら、容姿は脅威の85だった。
───絵師さん、貴方は仕事を選べ‥‥‥こんなクソゲーで本気出すなよ。
これはやはり、リディアに購入されたい。
だって可愛いもん。
「見て、このアルバートって人、ステータスが凄く高いよ」
「あら本当ね。でもなんだか1人だけ、容姿低くない? なんか汚いし、顔が好みじゃないから私はパスかな〜」
今のは残り2人の令嬢の会話。
最初のは、おっとり系令嬢のニーナ・ベル。
この娘は主人公のリディアと仲が良く、単純にいい人。
後の俺に失礼な事を言った方は、頭の悪い雑魚ギャル令嬢のエリザベス・ムーア。
2人とも容姿が70を超えてるだけあって、普通に可愛い。
‥‥‥だが、そんな事より、ありがたい事実が判明。
彼女達にはステータスが見えている。
───いける!
確かに俺は容姿は低いが、初期ステータスならこの中で誰にも負けていないんだ。
王子との婚約の為に奴隷の育成をするのが彼女達の本来の目的なのだから、容姿が低くても誰か1人くらいは俺を購入しようする令嬢が現れるのは間違いないはずだ。
‥‥‥まあ既に、雑魚ギャル令嬢のエリザベスには購入を拒否されているわけだが。
───でも別に構わない。俺の本命は最初からリディア、君でした!
2人の後ろに立っていたリディアと目が合った。
ニコリと微笑んでくるその笑顔は天使のよう‥‥‥。
さあ、最初に奴隷を選択出来る君が俺を選ぶんだ。
笑顔でこちらに歩み寄ってくるリディア。
───勝ったな。そして可愛い。ありがとうございます。俺に鞭を打つのは君だ!
俺が自らの生存を確信した時、誰かが地下牢に降りてくるコツコツという音が響いた。
───そうか‥‥‥令嬢は4人のはずだから、敵役がまだ来てなかったな‥‥‥。
主人公のリディアに、ありとあらゆる嫌がらせと非道を繰り返し、最終的にほぼ全てのエンドで処刑される性悪女。
王子との婚約の為には手段を選ばない性格破綻者。
ただしその奴隷を育成する能力は高く、リディアにとって間違いなくラスボスの悪役令嬢。
「‥‥‥臭い。吐き気がするわ」
現れたのは眉間に皺を寄せて、こちらを冷たい視線で見つめる女性。
黒のロングヘアーに赤い瞳。
血が通っているのか疑いたくなるような、透き通る白い肌。
背が高く妖艶な身体付きをしているこの女性こそ、氷の女王ローズ・ブラッドリィ18歳。
───あ‥‥‥やばい‥‥‥。
コイツの特徴として、もう一つ大事な事を忘れていた。
説明書の裏の方にあった、ゲームの作成秘話での絵師の一言。
『ローズ・ブラッドリィを描くのは本当に苦労しました。プロデューサーに何度もダメ出しをもらい、泣きながら何度も何度も描きました。そのお陰で、今まで私の描いてきたキャラの中で、最高傑作の美人キャラが出来上がりました。是非ご覧下さい!』
───絵師さん‥‥‥あんた本気出し過ぎだ‥‥‥。
綺麗過ぎて目が離せない。
‥‥‥なんだコイツ、一体どうなってる?
【ローズ・ブラッドリィ】
教養98
体力55
感性95
品位75
〜〜〜〜〜〜
容姿100
好感度1
───容姿100とかふざけんな‥‥‥。
まじまじと見つめてしまっている俺に気づいたのか、ローズは恐ろしく冷たい視線をコチラに向けて口を開いた。
「こっち見んな、うじ虫」
やっぱ、性格悪っ!
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