4、飼い主が決まった!


 

 有能絵師が泣きながら本気で描き、容姿がMAX値100のローズ・ブラッドリィ18歳は、生で見ると脳みそが溶けて完成した味噌汁が口から出てくるのではないかと思うほどの美女だった。

 ‥‥‥ただし性格は最悪。


 ───ファーストコンタクトでうじ虫って言われたよ!


 結論としては、やっぱり買われるなら主人公のリディアがいい。

 顔が良くてもそんな性格破綻者に鞭は打たれたくない。


 いや‥‥‥そもそも、うじ虫とかウニョウニョした可愛らしい小動物扱いされてる俺が、コイツに選ばれるわけないか。




「ローズさん、この人達の中から1人選ぶらしいですよ」


 ニコニコとリディア。


「‥‥‥そう」


 リディアの声に振り向く事なく、眉間に皺を寄せたままのローズ。

 これは軽い無視だろ。


「ローズさんは、どなたにされます?」


 めげずにまたリディア。


「‥‥‥」


 遅れてきたくせに先頭に立ち、我が物顔で俺たち奴隷を見渡すローズ。


 ───コイツ完全に無視したぞ‥‥‥。


「皆さん素敵な方ばかりで悩みますよね」


 まだまだめげない可愛いリディア。

 

「‥‥‥リディアさん、私に話しかけないでもらえる?」


 振り向いてリディアを睨みつけるローズ。


「‥‥‥ごめんなさい」


 リディア、何故君が謝る‥‥‥。


 この性悪女、ゲームより性格悪くない?

 なんならちょっと怖いぞ。

 ゲームの時は立ち絵で表情はノーマルだったが、今のコイツは完全に眉間に皺を寄せて怒ってるようにしか見えないからか?


 いや、彼女はラスボス。

 これくらい悪い人でいてくれた方が、倒す時に心が痛まないってところか。


 俺は可愛い可愛いリディアに視線を向けた。


 ───さあ、共にこのラスボスを倒そう、俺を選択するのだ!


 俺の熱い視線に気付いてくれたリディアは、こちらに向かって優しい笑みを返してくれた。


 見つめ合い笑い合う2人。


 ───いける!


 心が通じた気がした。


 俺は可愛いリディアの為なら、ゲーム知識をフル稼働してこのラスボスローズ討伐に手を貸そうと思う。

 君の鞭なら、俺は喜んで受け入れよう───


「決めたわ。コレにする」


 リディアと俺の絡み合う熱い視線を遮るように、俺の前にユラリと現れたのは、魔王のように恐ろしい顔の美女。


「‥‥‥はい?」


 美しいその手は俺を指差していた。


「‥‥‥」


 ローズは無言。


「‥‥‥うじ虫を選ぶなよ。それに、最初に奴隷を選択するのはリディア嬢のはずだろ?!」


 ゲームではそうだ。


「‥‥‥臭いから、こっち見ないで」


 おお、俺の視線って相手の嗅覚に影響を及ぼすのか‥‥‥それは知らなかった!


「ローズさん、その方ステータスは高いですけど‥‥‥本当にいいんですか?」


 可愛いリディアの助け船。

 そうだリディア、俺が欲しいんだろ?

 絶対にこんな性悪に渡すんじゃない!


「‥‥‥リディアさんもコレにしたいの?」


 さっきからコレコレって、俺は物じゃないですよ?

 可愛いリディアよ、はっきりと言ってあげなさい、私はこの俺アルバートと一緒に生きたいと!


「いいえ、その方ステータスが高いだけで、私はちょっと顔が苦手で‥‥‥。後、なんか汚いですし、匂いもキツいので‥‥‥私は最初からあの方にしようかと思ってましたので、別に構わないんですけど‥‥‥」


 そう言うと、俺の可愛いリディアは超美麗ネロを赤い顔で見つめていた。


 ───‥‥‥あれ?


 やばい、目から溢れ出る味噌汁で前が見えない‥‥‥。


 




 ローズは唇の端を少し上げると、牢獄から出るため階段に向かい歩き出した。


「おい待て、俺はお前にはついて行かないぞ!」


「‥‥‥ねえ、話しかけないでくれる? 目が腐るわ」


 こちらを振り向く事なくローズ。

 今度は俺の声が相手の視覚に影響をもたらしたらしい。

 見てもないのに目が腐るわけないだろ‥‥‥いや、そもそも見ただけで目は腐らない。


「絶対やだ!」


「それ以上話すと、肥溜めの肥やしにするわよ」


 畑の肥やしである肥溜め、それの肥やしだと‥‥‥なんてよくわからない素敵な職業!

 


 その後、嫌がる俺は奴隷商人に無理やり抱え上げられ、牢獄から追い出されたのだった。

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